研究課題/領域番号 |
17K05963
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
高橋 光信 金沢大学, 物質化学系, 教授 (00135047)
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研究分担者 |
桑原 貴之 金沢大学, 物質化学系, 准教授 (80464048) [辞退]
辛川 誠 金沢大学, 新学術創成研究機構, 准教授 (80452457)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 有機薄膜太陽電池 / 耐久性 / 劣化機構 / バルクヘテロ接合 / 化学分析 / フラーレン誘導体 / 共役系高分子 |
研究実績の概要 |
デバイスへの光照射による性能低下は、積層膜で構成される有機薄膜太陽電池(OPV)のどこが原因で生じるのか、光照射下の積層膜内でどのような反応が生じるのかは学際的な分析を必要とするため、これまでは明らかではなかった。 平成29年度は、3種類のフラーレン誘導体をアクセプター材料として用いた逆型OPV(ITO/ZnO/有機発電層(P3HT+フラーレン誘導体)/PEDOT:PSS/Au)の性能劣化挙動と、その劣化機構を調査した。その手法として、100時間の光照射前後のOPV駆動部にある有機半導体の化学分析を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)と紫外可視吸収スペクトルを用いて行った。また、発電層ブレンド膜の形状観察をAFM測定により行った。 OPV性能およびその経時変化は、3種類のどのフラーレン誘導体を用いてもほぼ同じであり、100時間の連続光照射によって約15%減衰した。その原因を明らかにする目的で、有機発電層の化学分析や発電層形状の観察を行った。これらの観測をより容易に行うために、(1)有機発電層/PEDOT:PSSの界面を剥離して奇麗な有機発電層を顕にする技術、(2)発電層ブレンド膜からフラーレン誘導体のみを選択的に抽出する技術を確立した。その結果、アクセプターであるフラーレン誘導体はOPVの100時間連続駆動によって全く化学変化を受けておらず、一方、ドナーの共役系高分子P3HTはより小さい分子量の化合物に分解していることを見出した。すなわち、デバイスの性能低下の一因が、共役系高分子P3HTの低分子量化による可能性を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
世界に先駆けて、OPV駆動部にある有機発電層を構成するフラーレン誘導体と共役高分子P3HTの光照射前後の化学分析を行う実験手法を確立し、劣化原因の一因を突き止めることが出来た。また、有機発電層であるフラーレン誘導体とP3HTから成るブレンド膜からフラーレン誘導体のみを選択的に抽出する方法を見出し、原子間力顕微鏡(AFM)観察によって、バルクヘテロ接合と正孔輸送のためのP3HTネットワーク構造をより明確に捉える実験的手法を明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
(1)P3HTの分子量低下が素子性能にどのような影響を与えるかを調査して、P3HTの分子量低下とOPV性能劣化の因果関係を明らかにする。 (2)ドナー材料である共役系高分子P3HTの代わりに共役系高分子PTB7から成るブレンド膜を有機発電層として有するOPVの劣化挙動を明らかにし、その原因を調査する。 (3)劣化原因の一つとして、有機発電層のバルクヘテロ接合(BHJ)形状を形成するために添加される高沸点化合物の光変質が挙げられる。そこで、添加物なしでBHJ形状を発現させる方法を模索する。
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