研究実績の概要 |
CO2有効利用/回収貯留技術(CCU)の実用化には、効率的なCO2分離回収が必須であり、膜分離法が期待されている。2-(2-aminoethylamino)ethanol (AEAE)などのアミンをCO2キャリアとした促進輸送機構に基づくCO2分離膜の研究開発において、ピペラジンやその誘導体を触媒量添加することによって分離膜のCO2分離性能が向上することがわかっている。本研究では、ピペラジン誘導体の添加効果によるCO2透過促進機構の解明を行なった。 Poly(vinyl alcohol) (PVA)を高分子マトリクスとしてAEAEやピペラジンやその誘導体を物理固定した高分子膜を作成し、その微細構造や熱物性を検討した。その結果、アミンなどは、PVAと相溶性が高く、相分離せずに均一に高分子マトリクス中に分散していることがわかった。そして、PVAは室温でガラス状であるが、アミンなどの添加によってゴム状となり、120℃以下では安定であることが分かった。また、アミン含有高分子膜のCO2分離性能評価を通した結果、特にピペラジン誘導体3-(piperazin-1-yl)propane-1,2-diol添加アミン含有高分子膜が、加湿条件下で最も高いCO2選択透過性の向上を示した。 ここで、CO2透過性は、CO2/H2、CO2/N2、およびCO2/CH4混合ガスを用いた場合で変化しなかった。よって、CO2は他のガスと競争透過していないことが明らかになり、また13C NMRによって、CO2はアミン含有高分子膜中で、主に炭酸水素イオンとして透過していることがわかった。そして、当該ピペラジン誘導体を添加した際は、CO2と特異的な相互作用によって、カルバミン酸結合を形成し、これが容易に加水分解されるために炭酸水素イオンの生成効率が増加する。これによって、高分子膜のCO2透過性が向上したと考えられる。
|