研究課題/領域番号 |
17K05971
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪産業技術研究所 |
研究代表者 |
伊藤 貴敏 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 森之宮センター, 研究部長 (60416295)
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研究分担者 |
岩井 利之 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 森之宮センター, 主任研究員 (20416291)
松元 深 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 森之宮センター, 主任研究員 (50416301)
隅野 修平 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 森之宮センター, 研究員 (60783272)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | フラーレン / メタノフラーレン / 選択的合成 / ヒドラゾン / 硫黄イリド / 有機薄膜太陽電池 |
研究実績の概要 |
フラーレン骨格に有機基を二つ置換すると、π共役系が縮小され高LUMO化するため、電圧値が向上すると報告されている。有機薄膜太陽電池材料のアクセプタ材料の設計に関しては高LUMO化させることにより性能の改善が試されている。しかしながら、フラーレンへの複数置換基の導入においては異性体混合物を生じ、そのそれぞれのエネルギー準位が異なることから、電池性能の評価において電圧値の極小化が起こる。また、有機付加基の立体的な影響が、電子移動度の低下を引き起こす可能性があると考えられている。これら負の影響を小さくするために、高度かつコンパクトに置換位置を制御した有機二置換フラーレンを高選択的に合成できる付加前駆体を分子設計した。そこで異性体の生成を抑制するために分子中に二つの反応基を有する付加前駆体を設計した。これまでの成果としてフラーレンに対して二つ置換するために付加前駆体の分子内に二つの反応性基(トシルヒドラジンとスルフィド)を有する付加前駆体を新規に合成し、アクセプタ材料の標準として利用されているPCBMに類似したフェニル基およびメチルエステル基を含む二置換フラーレン誘導体を合成した。また、付加前駆体の合成のおいては、6工程が必要であった合成法を、芳香族炭化水素と3-クロロプロピオニルクロリドを原料とした工程へ改良により、付加前駆体を3工程で得ることを見出した。さらに6工程を要する前駆体合成法において、芳香環にメトキシ基が三置換した誘導化では、芳香環近傍のケトンに保護基の導入時に分解反応が進行したために合成が困難であったが、3工程前駆体合成においてトリメトキシフェニル基を有する有機二置換フラーレン誘導体の合成に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
フラーレン誘導体の有機基となる付加前駆体において、同一分子構造内にトシルヒドラゾンとスルフィドを有する二官能性の付加前駆体の短工程合成法を利用して、これまでに芳香環上のパラ位にメトキシ基、エトキシ基、2-メトキシエトキシ基、メトキシカルボニルメトキシ基などの各種置換基を有する付加前駆体が効率良く合成できた。これまでの6工程を要する前駆体合成法では、芳香環上に電子供与性のメトキシ基が三置換した誘導化は、前駆体合成時に芳香環近傍のケトンへの保護基の導入の際に分解したために三置換体を得ることができなかった。今回、短工程の前駆体合成法を利用することにより、トリメトキシフェニル基を有する有機二置換フラーレン誘導体を合成できることを見出した。新規二置換フラーレン誘導体の合成へ進展はあるが、予定がやや遅れていると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度では、これまで得られたフラーレン誘導体について、電気化学的手法による評価を行う。さらに、これまでの検討において満足のいく結果が得られていない二置換フラーレン誘導体からのカルボキシル基の除去について再度検討を行う。これら物性評価や誘導化検討において必要な種々フラーレン誘導体を、付加前駆体原料から出発してボトムアップの合成を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
二置換フラーレン誘導体の合成に関して、これまでに効率的な合成方法を開発した。原料となる付加前駆体原料合成からボトムアップが必要である。このことから、使用の計画として、前駆体試薬等の消耗品として支出する予定である。
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