研究課題/領域番号 |
17K05975
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
鈴木 登代子 神戸大学, 先端融合研究環, 助教 (40314504)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ポリマーカプセル / シリカ粒子 / ゾルゲル反応 |
研究実績の概要 |
本研究は,シリカの前駆体であるテトラエトキシシラン(TEOS)を内包したポリマーカプセル内にてゾルゲル反応を進行させることによるシリカ粒子内包カプセル作製法を確立させ,さらに他の金属粒子内包系へと発展させることを目的としている。初年度は特に,カプセル内ゾルゲル反応によるシリカ粒子内包カプセル作製法を確立することに注力し,具体的には次のようなことに取り組んだ。1)光学顕微鏡を用いて経時的な顕微鏡観察を行いながら,生成機構の解明に取り組んだ。2)これまで用いてきたアンモニア水の他に,異なる塩基性及び酸性触媒を適用した。 1)に関しては,カプセル内のTEOSがアンモニア水により加水分解反応を受けると, TEOS1分子から4分子のエタノールが脱離する。この副生したエタノールは速やかにカプセル外の媒体に放出され,カプセル内にはその体積減少分を埋めるために,媒体の水が浸入した。この水はTEOS内で水ドメインを形成し,反応の進行と共にそれは徐々に大きさを増した。そして,この水ドメインがシリカ粒子生成の反応場であることが明らかとなった。 2)に関しては,非常に興味深い結果が得られた。同じ塩基性触媒であっても,水酸化ナトリウムを用いた場合,ゾルゲル反応はほとんど進行しなかった。ナトリウムイオンもしくは水酸化物イオンなどの親水性の高いイオン塩は,ポリマーからなるカプセル壁を通過しにくく,TEOSと接触しなかったと推察された。また,酸性触媒である塩酸の場合,アンモニア水と違って,ゾルゲル反応が進行しても,カプセル内に明瞭なシリカ粒子は観察されなかった。ゾル状のシリカが生成し,電子顕微鏡試料作製のために乾燥させる際に,合一し粒子が形成した。均一系において報告されている塩基性触媒と酸性触媒におけるシリカの立体構造性の違いが反映されたものと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度にあたる平成29年度は,申請者が別途採択された科研費(国際強化)の研究遂行のため長期海外出張した。その間も本課題研究は,スカイプを用いて学生とミーティングをしながら,研究遂行に取り組んできたが,その進捗状況は予定よりもやや遅れている。本年度はより精力的に研究を進めていく。具体的には条件を振って粒子を作製し電子顕微鏡により観察する検討に留まっているため,NMRやXPS, EDXなどにより詳細な検討を行いたいと考えている。また,特に酸条件では,シリカ粒子の構造決定がゾルゲル反応時でなくその後の乾燥時であるため,乾燥条件についても検討を行っていきたいと考えている。また,カプセル径によっても生成するシリカ粒子のモルフォロジィが変化する傾向にあるが,大きさを揃えての検討取り組みたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に引き続き,カプセル内ゾルゲル反応によるシリカ粒子内包カプセルにかんする検討に取り組むと共に,他金属種を含む系への適用範囲拡大に取組む。具体的には次のようなことに取り組む予定である。 1) TEOS内包カプセルのカプセル壁厚み及び架橋密度(カプセル壁の網目構造の大きさ)を増減させて,カプセルの作製を行ない,生成するシリカ粒子のモルフォロジィに対する影響を検討する。また,上述したようにカプセル径の影響も検討する。 2)触媒(担体)利用を見据え,加圧下高温水処理により,湿潤ゲル状態から縮合反応を完全に進行させ結晶性の向上条件を検討する。 3)Si以外の金属アルコキシド(油溶性)を本作製法に適用するために,まずはTEOSと相溶する有機金属アルコキシドを用いて,シリカと同時にゾルゲル反応を行い,シリカ構造ネットワーク内への取り込みを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の長期海外出張により研究の進捗状況がやや遅れ気味であること,また実際に導入したい研究機器や物品があるが,実際に手に取ることなく業者とのメールのやりとりだけで判断することが出来なかったことが大きな理由である。それは来年度には解消される予定である。
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