研究課題/領域番号 |
17K05977
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
西長 亨 首都大学東京, 理学研究科, 准教授 (30281108)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 自己組織化 / オリゴチオフェン / 金微粒子 / ラジカルカチオン |
研究実績の概要 |
ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)は最も成功した導電性高分子であるが、その部分構造であるEDOT(E)の中性体は3量体で難溶であり、それより長いオリゴマーの精密合成は困難である。そのため、構造が明確な3,4-ジオキシチオフェンのオリゴマーのチオラートを金微粒子の周りに取り囲ませるためには、E体と可溶性の置換基が導入可能なプロピレンジオキシチオフェン(ProDOT(P))との混合オリゴマーを用いることが有効であると期待される。昨年度までに、ジエチル基をもつプロピレンジオキシチオフェン(P(Et))と、Eを組み合わせた混合4量体E2P(Et)2の誘導体のうち、その両端をメチルチオ基でふさいだMeS-E2P(Et)2-SMeが、室温空気中でも安定なラジカルカチオンを与え、さらにジクロロメタン溶媒中、低温でπダイマー形成能を有することを明らかにしている。このE2P(Et)2ユニットを金微粒子上にチオラートとして組み込むために、チオール基の前駆体であるSCN基をもつ誘導体MeS-E2P(Et)2-SCNの合成法を検討した。E2P(Et)2は高いHOMO準位をもつため、一般に用いられているSCN基の導入法では容易に分解することがわかった。そのため、種々の方法を検討し、中程度の収率でSCN基を導入し、MeS-E2P(Et)2-SCNとして単離する方法を確立することができた。さらに、合成したMeS-E2P(Et)2-SCNを水素化リチウムアルミニウムでチオール体に還元した後、常法により金微粒子を作成したところ、MeS-E2P(Et)2-Sが配位した金微粒子が合成できることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
EDOTとProDOTを組み合わせたオリゴマーユニットに、チオールの前駆体となるSCN基を導入する方法を確立した。またその混合オリゴマーのチオールを配位子させた金微粒子の合成にも成功した。
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今後の研究の推進方策 |
EDOTとProDOTを組み合わせたオリゴマーのチオール体と、金微粒子上に配位させたその混合オリゴマーとの違いを各種スペクトルで確認する。また電気化学測定により、金微粒子上の混合オリゴマーのラジカルカチオン種の安定性を検討する。 また、金微粒子間で混合オリゴマーのπダイマー形成を介する伝導パス形成が観測されるかを、そのキャストフィルムの伝導度を中性とヨウ素ドープ状態で比較することにより観測する。 さらに溶液中での金微粒子の自己会合挙動について検討する。
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