研究実績の概要 |
本研究では、溶液中でよりラジカルカチオン種を高度に安定化し、かつπダイマー形成能を有するエチレンジオキシチオフェン(EDOT)と、可溶性の置換基を導入できるプロピレンジオキシチオフェン(ProDOT)を2分子ずつ組み合わせた混合4量体 1 (R = S-)を新たな保護基として採用し、それらで保護された金微粒子の合成とその性質を検討した。 金表面に吸着させるチオール1 (R = SH)の前駆体として、先行研究で採用したチオシアン酸カリウムと臭素を用いるSCN化を試みたが、1 (R = SCN)は生成されなかった。チオフェンの3, 4位に新たに導入した強い電子供与基のため、臭素あるいは微量の酸に対しオリゴチオフェン部位が副反応を起こしたと考えられる。それゆえ、塩基性条件下でSCN化が進行するチオシアン酸亜鉛とN-クロロスクシンイミドを用いて反応を行い、1 (R = SCN)を合成した。 次に、1 (R = SCN)をLAH還元し、チオール体である1 (R = SH)の合成を試みたが強い電子供与基によりチオラートの反応性が高まり、1同士がジスルフィド結合したと思われる生成物を与えた。そこで、次にLAHよりも還元力が弱いテトラブチルアンモニウムボロハイドライド(TBAB)を用いることにした。トルエン中、ドデシルアミン(DDA)で保護された金微粒子に、窒素雰囲気下1 (R = SCN)をTBABで還元させながら接触させることで、部分的にDDAが1 (R = S-)により交換された金微粒子の合成に成功した。その中性のキャストフィルムにヨウ素ドープを施すことで伝導度が約160倍向上した。
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