研究実績の概要 |
水溶性高分子であるエチレン―ビニルアルコール共重合体、カルボキシ基をもつポリエステル、ポリ(2-ヒドロキシエチルアクリレート)、でん粉、リン酸化デンプンなどの水溶液にカルシウムイオンとリン酸イオンを加えることによってヒドロキシアパタイトの結晶を高分子上で行い、ナノメートルスケールでヒドロキシアパタイトと高分子が複合化した複合体を合成した。複合体中の高分子と無機結晶の割合は、共沈殿を行うときの仕込み比でほぼ制御でき、ヒドロキシアパタイトの重量分率が30~70%のものを合成した。共沈を行うときの温度、無機イオンを加える順番、対カチオンなどが生成した複合体の結晶性や機械的性質に影響を与えることが分かった。X線回折により比較すると、共沈の温度によって生成するヒドロキシアパタイトの結晶子サイズは異なり、70℃程度の温度で共沈を行うと、数百ナノメートルの針状の結晶が得られた。また、でん粉とリン酸化デンプンを比較すると、後者の方が優れた機械的性質を示す複合体になり、リン酸基によって、ヒドロキシアパタイトの結晶核生成や結晶成長、高分子と無機結晶の界面の結合などが影響を受けることが示唆された。これらの複合体粉末を120℃、120 MPaで金型中で一軸加圧成型することによって試験片を作成し、3点曲げ試験を行うと、曲げ強度が20~80 MPa, 曲げ弾性率が、0.5~4.5GPa 程度の力学的な性質を示すことがわかり、汎用プラスチックを上回る機械的性質を示すものも得られた。エチレン―ビニルアルコール共重合体などの合成高分子とデンプンを比較すると、でん粉から作成した複合体の方が大きな曲げ弾性率を示し、高分子の剛直な構造が複合体の力学特性に反映していることが分かった。
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