1. X線CTによる繊維軸方向へのボイドの連続性観察 撮像によりHU値(X 線CT 特有の輝度を示す単位)の面積を示すHUヒストグラムが得られる。繊維部のHU値はほぼ4137以上であることがわかった。繊維軸方向に連続した断層画像が得られた。繊維断面内には、直径およそ 5-10マイクロメーターの比較的大きな低吸収率領域が観察された。X 線CT の分解能がSEMより劣ることから、SEMで観察される複数のボイドが、X線CTでは1つの低吸収率領域として認識されたと考えている。また繊維軸方向に沿った 800マイクロメーターの区間で繊維内部に観察される低吸収率領域の位置は、ほとんど変わっていない。したがって、低吸収率領域は少なくとも縦横比80倍以上に達するフィブリル状形態をとっており、実際のボイドも繊維軸方向に対して連続している可能性が高い。分子量が低いほどボイド分率の大きい繊維を作製しやすく,逆に分子量が高いほどボイド分率が高くなり難い. 2. Fibril構造の分子量依存性に関する取り組み 2019AのSPring-8のFSBLアドバンス・ビームタイムを活用して、固有粘度が異なる3種類のPET繊維のフィブリル構造およびボイド形成メカニズムの確認に臨んだ。今回の実験では前回より位置分解能が高いSOPHIAS検出器を用い、分子量がネック直後でのUSAXS像変化におよぼす効果に注目して実験を行った。延伸した際の倍率と応力の関係による相関を確認するためのUSAXSを行った。高分子量であるほど高倍率まで安定した延伸が可能であり、加えて高応力を印加することができた。経過時間に依らず赤道方向に強い散乱がみられたが、これは繊維表面からの全反射によるものと考えられ、残念ながら試料に由来する散乱像は確認できなかった。使用した検出器の感度不足が原因と考えられる。
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