研究課題/領域番号 |
17K05992
|
研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
金山 直樹 信州大学, 総合医理工学研究科, 准教授(特定雇用) (80377811)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | DNA / マイクロビーズ / 粒子間力 / 光ピンセット / 水和 / スタッキング |
研究実績の概要 |
これまでに固液界面で二本鎖DNAがブラシ状に集積して形成する「DNAブラシ」において、表層構造の僅かな違いがその界面特性に明敏に反映される事例を報告してきた。本申請課題では、DNAブラシの表層構造と水和状態の関連性に着目し、これを制御するための「水和スイッチ」システムの創出を目指す。本年度(H30)は、以下の項目に関して重点的に検討を行った。 (1)DNAマイクロビーズのブラシ密度の定量化:昨年度の検討において確立した調製法をもとに、粒径が2マイクロメートルのカルボン酸ビーズ上に形成されるDNAブラシの密度を、Cy3ラベル化DNAを用いて蛍光定量した。その結果、DNAブラシは末端配列に依らず、55 - 60 nm^2/strandの密度でビーズ上に形成されていることがわかった。 (2)DNAマイクロビーズのレーザートラッピング:所定濃度のNaClおよび0.01 wt% Tween20を含むTris-HCl緩衝液(10 mM, pH 7.4)に分散させたDNAマイクロビーズのIRレーザーによるトラッピングを検討し、単一粒子操作に最適な濃度を決定した。また、レーザー出力1.5WにおけるDNAマイクロビーズのtrapping stiffness (k)を、パワースペクトル解析から求めたところ、溶液中の塩濃度や表層の配列に依らず k = 2.0 - 3.0 x 10^-4 N/mの範囲であることを確認した。 (3)光ピンセット法によるDNAブラシ界面間力計測:レーザートラップした2つのDNAマイクロビーズを操作し、粒子間におけるForce-Displacement (F-D)曲線を測定した。表層構造がGCペア、およびCCミスマッチのものに関して測定を行った結果、我々が以前報告した液中コロイドプローブAFM法による力学計測と傾向が良く一致していることがわかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
様々な表層構造をもつDNAマイクロビーズを調製し、その基本的なキャラクタリゼーションが順調に進んでいる。また、当該粒子をレーザーで単一粒子トラップし、2つの粒子間で生じる相互作用を定量的に力学計測する手法を当初の計画以上のペースで確立することができ、関連データの蓄積も順調に進行している。
|
今後の研究の推進方策 |
DNAブラシの表層構造に加え、溶液中の塩濃度や種類がDNAマイクロビーズ間相互作用に及ぼす影響について、Hoffmeister系列などを参考にしながら系統的な検討を行う。確立できた評価法を、本課題の最終目標である「水和スイッチ」を導入したDNAブラシに適用する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本課題を遂行するための主要装置(光ピンセットシステム)の補修が、当該メーカーの統合の影響で年度内に完了できず予定していた補修費の執行に至らなかったことが主な理由である。早期に装置の補修が完了するよう、メーカー側に協力を要請し、計画どおり予算執行を行う計画である。
|