研究課題/領域番号 |
17K05992
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
金山 直樹 信州大学, 総合医理工学研究科, 准教授(特定雇用) (80377811)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | DNA / コロイド粒子 / 分散凝集制御 / 光刺激 / 粒子間力 |
研究実績の概要 |
これまでの検討において、表面がDNAブラシで覆われたコロイド粒子(DNAコロイド)が高塩濃度の水溶液中で示す表層構造選択的な分散凝集挙動を、光ピンセット法による粒子間力計測をもとに解析を進めてきた。その結果、高塩濃度のDNAコロイド粒子間における表層配列選択的な粒子間力の発生を確認した。具体的には、表層に対合した核酸塩基(GCペア、ATペア)をもつDNAコロイド粒子間には、水溶液のNaCl濃度の上昇に伴って引力的な粒子間力が生じるのに対し、表層に対合していない核酸塩基をもつDNAコロイド粒子間では同じ高NaCl水溶液中でも引力は殆ど発生しないことを明らかにした。 本年度は、これまで明らかにしてきた高塩濃度の水溶液中でDNAコロイド粒子間に生じる粒子間引力を、DNA二重鎖全体の構造に影響を及ぼさない一定温度・イオン強度の条件下で光刺激により可逆的に制御することを検討した。金ナノ粒子をコアとするDNAコロイドの表層近傍に光異性化挙動が知られるアゾベンゼン誘導体(Azo-TN)を導入した。表層にATペアをもち、その近傍にtrans体のAzo-TNを導入したDNAコロイドは、高NaCl水溶液中で自発的に凝集し薄紫色を呈した。この溶液にAzo-TN 部位のtrans-cis 異性化を誘起する紫外光を照射したところ、凝集状態の粒子が徐々に分散し、520 nm付近に分散した金ナノ粒子特有のシャープな表面プラズモン吸収帯をもつ赤色の溶液に変化した。続いてAzo-TN のcis-trans 異性化を誘起する可視光を照射すると、粒子の再凝集が誘起され580 nm 付近にブロードな表面プラズモン吸収帯がシフトした薄紫色の溶液に変化した。以上の結果は、DNAコロイド表層近傍に導入したAzo-TNの光異性化に伴って、当該粒子間に生じる引力が可逆的に変化したことを示すものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
高濃度の塩を含む水溶液中において、DNAコロイド粒子間に生じる力とその表層構造の相関の系統的な評価結果をもとに、本課題で提案する「水和スイッチ」のコンセプトを実証することができた。
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今後の研究の推進方策 |
計画していた実験内容は、ほぼ完了することができた。今後は、得られた成果のまとめを進めながら、関連学会での発表および誌上発表を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度が最終年となる予定であったが、コロナの影響により参加予定であった学会等が中止となったため、計画を変更する必要が生じた。予定していた実験はほぼ完了できているため、予算残額については、研究成果の発表(誌上発表、R3年度に開催予定の関連学会への参加費)に主に使用する計画である。
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