【研究実績の概要(平成31(令和元)年度)】・・・多分岐ポリベンゾオキサゾール(PBO)系ハイブリッド膜の作製に際し、従来のテトラエトキシシラン(TEOS)に替えてメチルトリメトキシシラン(MTMS)を使用した。その結果、気体透過性の大幅な向上は見られたが、各種気体の組み合わせにおける分離性は低下した。このことから、MTMSを用いて作製したハイブリット膜では、メチル基の導入によりシロキサンネットワークが疎となり、気体分離性に寄与しない、比較的大きな自由体積空孔が形成されたと推定される。また、合成時のモノマー濃度、モノマー添加順序等を最適化し、末端基構造が従来とは異なる多分岐PBOおよびそのシリカハイブリッド膜を作製した結果、二酸化炭素/メタン分離性が大幅に向上し、当初目標のターゲット領域に到達する卓越した二酸化炭素/メタン分離特性を示した。研究成果について、学術論文発表(1件(査読有り))、学会発表(5件(うち国際学会:1件))を行った。 【研究実績の概要(平成29年度-平成31(令和元)年度)】・・・本研究では、二酸化炭素/メタン分離性に優れた、新規な多分岐PBO系ハイブリッド気体分離膜の創製を行った。多分岐PBOは高自由体積分率に起因して、高い気体透過性を示した。また、多分岐PBO系ハイブリッド膜は、既存の高分子系気体分離膜の上限境界線を越える、優れた二酸化炭素/メタン分離特性を示した。このことから、主鎖骨格への多分岐構造の導入およびシリカとのハイブリッド化が、高気体透過・分離性の発現に大きく寄与することが分かった。本研究の成果は、今後、分子設計に基づく気体分離膜材料創製の新たな指針を与えると予想され、また、膜分離技術の飛躍的な発展と、地球規模のエネルギー資源問題および環境問題の解決に大きく貢献すると期待され、学術的ならびに社会的意義は極めて大きい。
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