研究課題/領域番号 |
17K05997
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
北山 雄己哉 神戸大学, 工学研究科, 助教 (40649745)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 高分子微粒子 / 中空粒子 / 刺激応答性 / カプセル粒子 / 光反応 / 界面 |
研究実績の概要 |
本年度は主に以下の項目に焦点を当て検討を行った。 1.pH応答性中空・カプセル粒子の創製 本研究では、界面光反応に用いる高分子微粒子に機能性コモノマーを共重合することにより、機能性中空粒子・カプセル粒子の合成を試みた。2-(diethylamino)ethyl methacrylateと2-cinnamoylethyl methacrylateの共重合体(P(DEAEMA-co-CEMA))を作製し、溶媒蒸発法によって真球状P(DEAEMA-co-CEMA)粒子を合成した。本粒子分散液に対して254 nmの光照射を行った後、未架橋ポリマー除去を行った結果、中空粒子の合成に成功した。さらに、本中空粒子に対して蛍光色素などの化合物を内包しカプセル微粒子を得ることに成功した。さらに、異なるpHに調整した緩衝液中に蛍光色素内包カプセル粒子を分散させ、一定時間後の上澄み中の蛍光強度を測定した結果、低pHにおいて高い蛍光強度が観察されたことから、界面光反応を利用してpH応答性カプセル粒子を創製することに成功した。
2.異なる光反応性官能基を有する高分子微粒子に対する界面光反応 本研究では、光反応性基としてcoumarin基を有する高分子微粒子を合成し、本高分子微粒子に対する異なる波長の光照射を利用した界面光反応を行うことによって、中空・カプセル粒子の合成を試みた。coumarin基を側鎖に有する高分子からなる真球状高分子微粒子に対して365 nmの光照射を行い、その後未架橋ポリマーを除去した結果、中空状の高分子微粒子を得ることに成功した。さらに、coumarin基dimerの逆反応が生じる254 nmの光照射を行ったところ、架橋性中空粒子に由来する濁度が減少し、中空粒子が分解したことを示されたことから、光刺激応答的に分解性を示す中空粒子を創製することに成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究成果として、cinnamoyl基とは異なる吸収波長をもつ光反応性官能基として、coumarin基を有する光反応性高分子微粒子を合成し、これに対する界面光反応を行うことにより中空状高分子微粒子を得ることができ、我々が開発を行っている光反応性真球状高分子微粒子に対する界面光反応の適用範囲拡大に成功した。さらに、coumarin基dimerを架橋点として有する中空粒子に対して低波長の光照射を行うことで分解することも明らかにしており、光刺激に応答して分解する機能性高分子微粒子を得ることができた。さらに、光反応性基を有するモノマーではなく、コモノマーに刺激応答性を付与することによって、得られる中空・カプセル粒子に機能を付与できることも明らかにし、界面光反応による機能性高分子微粒子創製のためのアプローチ拡大に成功した。無機微粒子との複合化については現在引き続き検討中である。これらに関連する研究成果について学会発表を行い、学術論文として投稿している。従って、本年度の研究については、おおむね順調に進捗し、十分な研究成果と知見を得られたと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度において、無機微粒子との複合化について検討を引き続き行う。また、光反応性高分子微粒子のモルフォロジィ制御を行うことにより、最終的に得られる中空粒子のモルフォロジィを制御し、新規機能性高分子微粒子の創製を試みる。まず、この目的を達成するため、これまで作製してきたmethacrylate系の光反応性高分子に加えて、styrene系などの異なる骨格を有する光反応性高分子の合成およびその光反応性について調査する。さらに新規光反応性高分子を利用して、界面光反応を利用し中空高分子微粒子合成が可能かどうかを調査する。その後、これらのポリマーを利用したモルフォロジィ制御された光反応性高分子微粒子の合成およびそれに対する界面光反応を行うことによって、通常の中空微粒子とは異なるモルフォロジィを有する新規中空高分子微粒子の創製を達成する。さらに、得られた中空高分子微粒子の機能について調査する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度に計画していた無機微粒子との複合化について次年度も引き続き継続するため、それらのための試薬類購入予算を繰り越した。
|