本年度は主に以下の項目に焦点を当て検討を行った。 1.pH応答性カプセル粒子の刺激応答性制御 本研究では、界面光架橋反応により作製する刺激応答性カプセル粒子のpH応答性制御を試みた。種々の共重合組成を有するpoly(2-(diethylamino)ethyl methacrylate-co-2-cinnamoylethyl methacrylate)(P(DEAEMA-CEMA))をラジカル重合により作製し、これらを溶媒蒸発法により真球状微粒子とした。本微粒子に対する界面光架橋反応により中空粒子を作製し、後天的に蛍光色素を導入することでカプセルを作製した。作製した様々な組成を有するカプセル粒子のpH応答的内包物放出能を評価した結果、CEMA組成が多いほど、より低pHにおいて内包物を放出することがわかり、ポリマー組成がカプセル粒子のpH応答性に影響を与えることを明らかにした。以上の結果から、pH応答性カプセル粒子の刺激応答的内包物放出特性を制御することに成功した。 2.界面光反応の反応領域制御によるモルフォロジィ制御 本研究では、高分子微粒子界面の光反応領域を制御することで、得られる架橋高分子微粒子のモルフォロジィ制御を試みた。光反応性基としてCinnamoyl基を有する高分子微粒子を水媒体中での分散状態で界面光架橋反応を生じさせた場合、微粒子の自由回転により全面が架橋された結果、シェル架橋性中空高分子微粒子が得られる。一方で、微粒子の自由回転を無くした乾燥状態で光照射を行った場合、光照射された領域のみが架橋された結果、お椀状異形高分子微粒子が得られた。さらに、光照射時間が異形高分子微粒子のモルフォロジィに与える影響についても検討を行った。これらの成果から、光反応の特性を生かして界面光架橋反応を用いた高分子微粒子のモルフォロジィ制御を達成した。
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