研究実績の概要 |
PPにはi-PPを用い,ポリシランにはポリメチルフェニルシラン(PMPS)を用いて、PP/PMPSの混合割合の異なるブレンド試料を調製し、それを用いて射出成形機にて中心部にウエルド部を有する試験片を作製した。引張試験の結果より, PMPSを添加したPP試料は, PP単体と比較して破断ひずみが大幅に増加することが分かった. また, PMPSの添加量が増加するに従って, 弾性率, 降伏応力, 破断応力が減少する傾向が認められたことより, PMPSの添加は, PPに柔軟性を賦与する効果があると考えられる. 次に、ウェルド領域における形状変化を原子間力顕微鏡(AFM)により観察した結果、ウェルド間距離がPMPS未添加試料では約30mm程度あったものが、PMPS添加により約2/3程度まで減少することが分かった。これは、上記力学物性向上効果と合わせて考えると、ウェルド領域における溶融状態の改質効果におり、融着面積が向上し、その結果として力学物性も顕著に改善されたものと考えられる。更に, この溶融状態の改善効果についてレオメーターにより, PPの結晶の等温結晶過程に着目して検討を行った. その結果, 結晶化速度はPMPSの添加量が増加するに従って, 長時間側にシフトする結果となり, PMPSはPPの結晶化を遅延させる効果があることが分かった.さらにDSC測定の結果より, PPにPMPSを添加するとともに, 結晶化温度が低下する傾向が確認できた. 以上の結果より, PPにPMPSを添加したPPの分子運動性が向上し, その結果, 低温域から結晶の融解が始まるとともに, 融点以下の一定温度での結晶化速度が低下したものと考えられる. これらの結果より, 射出成形時のウエルド部ではポリシラン未添加PPと比較して, 長時間”結晶融解状態”を保持できるため, ウエルド強度が向上したものと考えられる.
|