研究課題/領域番号 |
17K06004
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
児島 千恵 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50405346)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 高分子材料 / デンドリマー / 刺激応答材料 / 温度 / pH |
研究実績の概要 |
温度応答性ポリマーはLCST型(加温によって白濁する)とUCST型(加温によって溶解する)に大別され、インテリジェントマテリアルとして様々な分野で利用されている。本研究では、機能性ナノ粒子として有用なデンドリマーにUCST型・LCST型の温度応答性を付与し、インテリジェントマテリアルの創製を目指している。前年度までの成果として、1)フェニルアラニン(Phe)をもつカルボキシ末端ポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマーは酸性pHでUCST型の温度応答性を示すこと、2)Pheをもつスルホン酸末端PAMAMデンドリマーを合成し、これがLCST型とUCST型の性質をpHによってスイッチングできるユニークな性質を示すことを明らかにした。本年度は、このメカニズムを明らかにするために、内部を第四級化したPAMAMデンドリマーやPheとは異なる疎水性アミノ酸を結合させたデンドリマーを作製した。これらの温度応答性を比較することで、末端のアニオン部位とデンドリマーコアの双性イオン構造が重要であること、デンドリマー内部の三級アミノ基の構造やPhe残基が温度応答性のpHスイッチングに有用であることを示し、成果を論文発表した。 本年度は、さらに、このユニークなpHおよび温度応答性を示すデンドリマーの応用例についても検討した。温度やpHを変化させた条件での物質回収に利用できることを示すとともに、ドラッグデリバリー分野における細胞取り込み能を明らかにした。Pheをもつカルボキシ末端デンドリマーを皮内投与すると、リンパ節に集積し、さらに、リンパ節内のT細胞に取り込まれることがわかった。T細胞は、近年、免疫療法におけるキーとなる免疫細胞であるが、デリバリーが難しい細胞とされている。本研究で作製したデンドリマーはT細胞へのデリバリーに利用できる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の研究計画では、1年目にUCST型の温度応答性デンドリマーの作製、2年目にその応用、3年目にLCST型とUCST型をあわせもつ温度応答性デンドリマーの作製を行う予定であったが、全ての項目の実施を達成し、2報の論文発表を行った。さらに、当初応用を想定していた物質分離への利用だけでなく、リンパ節内の免疫細胞、特にT細胞へのデリバリーに利用できる可能性が示唆され、さらなる研究の発展が可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
上記に示したように、本研究で合成したデンドリマーは、リンパ節内の免疫細胞、特にT細胞へのデリバリーに利用できる可能性が示唆された。この研究について、学会発表および論文発表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の結果、当初の想定を超えた新たな研究成果を得ることができたので、この研究成果の学会発表や論文発表を行う必要がある。学会発表のために必要な経費(参加費、旅費など)と論文発表のために必要な費用(英文校正、追加実験のための消耗品購入)に充てる。
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