研究課題
本研究は、高分子溶液における不可逆的拡散現象の普遍性の探求と同時に、分子レベルでの相互作用に依存する(系に依存する)多様性を明らかにすることで、高分子物理学および非平衡系熱力学の発展に寄与することを目的とする。具体的には、熱力学的非平衡状態において、高分子鎖の不可逆的な拡散現象と構造形成現象を系統的な系の選択を基に調べる。着目する現象は、外場として安定な温度勾配を与え、熱平衡状態から離れた条件にて起こる濃度勾配形成現象(ルードヴィッヒ・ソレー効果)である。この構造形成現象に影響を及ぼす分子レベルの相互作用を理解するための一連の研究は、非平衡熱力学分野に実験データを提供するとともに高分子科学分野に新たな知見をもたらすことを意味する。ルードヴィッヒ・ソレー効果の測定対象として、水溶性高分子、核酸、タンパク質および水と水同位体の混合溶液を取り上げた。これらサンプル選びは基本的に計画通りである。これらサンプルを用いてルードヴィッヒ・ソレー効果を特徴づけるソレー係数の温度依存性などを実験的に決定している。学会等発表や論文発表などの成果公開は随時行っており、その詳細は業績リストを参照されたい。
2: おおむね順調に進展している
計画していた系におけるデータ取得が進んだことによりおおむね順調であると判断した。また、静的・動的光散乱や広帯域誘電分光法などを用いた分子ダイナミクス解析を並行して実施した。
最終年度という事を鑑みて、計画にしたがい系統的な系選びによる測定と解析を進める。同時に高分子の熱平衡状態でのキャラクタリゼーションを推進する。高分子物性理論と非平衡系輸送現象論の両者を軸とするモデル構築と理論的考察を行い、実験データとの比較を行うことでこの現象の普遍性を探求する。同時に、系に依存する多様性を系統的に調べ、分子レベルでの相互作用を調べるためのツールとして提供していく。このようにして、本課題の目的を達成することを目指す。
消耗品費や人件費が余剰金となったため次年度使用とした。次年度の研究計画には大きな変更はない。
すべて 2019 2018 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件) 学会発表 (40件) (うち国際学会 16件、 招待講演 4件) 備考 (2件)
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