研究課題/領域番号 |
17K06006
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研究機関 | 大阪工業大学 |
研究代表者 |
中村 吉伸 大阪工業大学, 工学部, 教授 (70298800)
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研究分担者 |
藤井 秀司 大阪工業大学, 工学部, 教授 (70434785)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | エポキシ樹脂 / 複合材料 / 界面 / 応力緩和 / シランカップリング剤 / 強靭性 / 破壊靭性 / 耐衝撃性 |
研究実績の概要 |
1. 無機粒子充てんエポキシ樹脂の耐衝撃性を向上させるために無機粒子表面にブラシ状のシランカップリング剤分子を成長させることが必要技術である。これを2つの方法で検討した。無機粒子には球状シリカ粒子を用いた。(1)ヘキシル基やドデシル基のような長鎖アルキル基を有するシランカップリング剤をシリカ粒子表面に反応させる。(2)メタクリロキシ基を有し,アルコキシ基を2個含むシランカップリング剤をシリカ粒子表面で重縮合反応させて分子鎖を成長させる。メタクリロキシ基含有シランカップリング剤を使ったのは単にモデル材としてである。(1)については,アルキル鎖の長いものほどシリカ粒子表面との反応性が高いという予想外の結果が得られ,その結果ドデシル基を有するシランカップリング剤の場合,単分子層被覆している量が化学吸着(表面と化学反応)していることが確認された。つまり,表面がブラシ状のドデシル基に完全被覆されたシリカ粒子の作製に成功した。(2)については,シランカップリング剤のモノマーユニットで約8分子層の化学吸着したブラシ状分子の被覆が確認された。(1),(2)の2つの手法でブラシ状分子被覆シリカ粒子の作製が可能であった。 2. 付着状態の評価方法の確立が必要である。熱重量分析(TG)でこの手法を確立した。シランカップリング剤処理シリカ粒子のTGカーブは,3段階の重量減少を示す。第1段は低分子のモノマー状シランカップリング剤の蒸発,第2段はこれが表面と水素結合したもの,第3段は物理吸着または化学吸着の高分子量シランカップリング剤または低分子シランカップリング剤がオリゴマー化したものであり,シランカップリング剤の良溶媒で洗浄前後のTGカーブからこれらの存在量が分ることを明らかにした。この結果は学術論文に投稿し,審査終了済である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【研究実績の概要】の2に示した,シリカ表面のシランカップリング剤分子のキャラクタリゼーション手法が確立したために,1のシランカップリング剤のシリカ粒子表面の付着量を増やすための実験が順調に進んだ。しかし,界面の効果を直接観察する検討は遅れている。上記1,2では,平均粒子径約3μmのシリカ粒子を使用しているが,シランカップリング剤で表面処理した1mmからサブミクロンサイズのガラス球を1粒子,熱可塑性樹脂に充てんしたものを引張試験して,応力負荷時の界面の状態をマイクロスコープで観察しようとした。ミリメートルサイズのガラス球にミクロンサイズのシリカ粒子と同様の表面処理層を形成させることと,ミリメートルサイズでは表面積が小さいので,上記2のキャラクタリゼーション手法が使えない2点の問題が現状ある。以下で対応を考えている。 (1)破壊靭性試験や衝撃試験を行い,最も効果的なブラシ状構造を明らかにする。 (2)マイクロスコープで観察可能な最小のガラス球をさがし,表面処理ガラス球を入れて検討する。この最良の系で界面の評価を確立したい。
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今後の研究の推進方策 |
充てん粒子表面のブラシ状分子鎖の構造のコントロール<=>コンポジットの破壊靭性,耐衝撃性の向上の関連の解明を2年目で目途をつけたい。このために,充てん粒子表面のブラシ状分子鎖の構造のコントロール→処理層のキャラクタリゼーション→コンポジット作製→物性評価のサイクルをできるだけ多くできるようにしたい。【現在までの進捗状況】で記した1ガラス球充てん法による界面の効果の確認は,最良の系で行いたい。 また,このような材料の場合,破壊靭性や耐衝撃性が高いだけでなく,材料強度とのバランスが重要である。他の特性を低下させない範囲で目標の破壊靭性,耐衝撃性を以下に向上させるかの点についても考えていきたい。
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