研究実績の概要 |
Yb3+を活性イオンとした固体レーザーは,次世代の高強度パルスレーザーとして期待されており,様々なホストが試みられてきた.K2NiF4型Yb:ABCO4およびメリライト型Yb:ABC3O7(A = Ca, Sr; B = Y, Gd, La; C = Al, Ga)ではA2+とB3+が結晶内で同一のサイトに無秩序に分布することから,Yb3+の配位環境が多様化し,超短パルスレーザー用媒質として必須であるブロードな発光帯を示すことが期待できる.本研究では,Yb:ABCO4およびYb:ABC3O7について発光特性を明らかにするとともに,浮遊帯溶融(FZ)法による単結晶育成を試みた. Yb:ABCO4については,A2+およびB3+のイオン半径の増大に伴い,Yb3+の発光帯が広帯域化することが確認された.しがし,Yb:CaYAlO4を除いて,ほとんどの化合物が分解溶融することが明らかとなったことから,Yb:CaYAlO4単結晶の高品質化に注力した.Yb:CaYAlO4は,Caに対してYがわずかに多い組成で一致溶融することが明らかとなり,この組成に基づいて,巨視的欠陥のない高品質結晶を浮遊帯溶融法によって作製することに成功した.その結晶を用いてレーザー発振をおこなったところ,64%のスロープ効率が得られた. Yb:ABC3O7については,すべての組成でK2NiF4型Yb:ABCO4のそれを上回る広帯域での発光が確認された.最も特性のよいYb:CaGdAl3O7につて結晶育成を試みたところ,分解溶融化合物であることが判明した.このため,新しい結晶育成方法として,ダブルパス溶媒移動浮遊帯溶融法を開発した.この方法は,共存する液相組成が不明であっても初晶から目的組成の化合物が得られるとともに,溶融凝固した原料棒を用いるため結晶育成が安定化し,結果として,結晶品質が改善されることを実証した.
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