最終年度となる令和元年度は主に、ビニルシランのラジカル重合体を用いた低密度ゲル形成の可能性を拡張するために、有機架橋部を形成しないメチルトリメトキシシラン(MTMS)などとの共重合系およびグラフェンなどのナノカーボン材料との複合化を検討した。 ビニル修飾シランとしてビニルメチルジメトキシシラン(VMDMS)を用い、MTMSとの共重合により得られたエアロゲルは、MTMSのみから得られたエアロゲル試料と比べて圧縮応力が高くなることが分かり、より固い(変形しにくい)エアロゲルが得られたことが分かった。このような機械的物性の変化は有機架橋鎖の導入によるものであり、ポリシロキサン部位に比べてより運動性が低くパッキング性の高い炭化水素鎖を導入することにより、より固いネットワークが得られたことを示している。このような機械的物性は、エアロゲル製造時の作業性や変形を伴う乾燥挙動、および様々な応用場面において、より信頼性の高い材料特性を与えるものと期待できる。 また、このような系にナノカーボン材料を導入するために、酸化グラフェン(GO)およびアミノシランを導入した系を設計することでエアロゲルの作製を試みた。3-アミノプロピルトリメトキシシランとGOを混合することでアミノ基とGO表面との還元反応により架橋体が形成され、VMDMS重合体と非重合体の存在下でアルコキシシランの加水分解・重縮合を行うことでこれらの複合体を作製し、エアロゲルを得た。得られたエアロゲルは超撥水性や柔軟な機械的物性に加え電気伝導性を示し、温度や可逆的な圧縮変形に応じてその伝導率(抵抗)が変化することがわかった。この性質を用い、温度センサーや応力・ひずみセンサーとしても機能することを明らかにした。
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