研究課題/領域番号 |
17K06016
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高井 茂臣 京都大学, エネルギー科学研究科, 准教授 (10260655)
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研究分担者 |
薮塚 武史 京都大学, エネルギー科学研究科, 助教 (20574015)
八尾 健 香川高等専門学校, 校長, 校長 (50115953)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 酸化物イオン伝導体 / 欠陥構造 / 格子間酸化物 / 灰重石型構造 / 陽イオン空孔 / 酸化物イオン空孔 / 固体酸化物形燃料電池 |
研究実績の概要 |
正方晶灰重石型構造をもつPbWO4のPbの一部をLaで置換すると格子間酸化物イオンを形成し、高温で高い酸化物イオン伝導性を示す。灰重石型構造はホタル石型から導かれるが、安定化ジルコニアや高温型の酸化ビスマスなどホタル石型構造を示す多くの酸化物イオン伝導体は、酸化物イオン空孔がイオン伝導に寄与することが知られている。このため、格子間酸化物イオンをもつPbWO4系酸化物イオン伝導体の導電機構はホタル石型のものから予想できないと考えられた。一方、近年我々のグループはCaWO4のCaの一部をアルカリイオンで置換したCa1-xAxWO4-d (A = K, Rb, Cs)が酸化物イオン伝導性を示すことを見いだし、灰重石型酸化物でも酸化物イオン空孔がイオン伝導に関与するすることを明らかにした。 本研究では灰重石型酸化物の欠陥構造とイオン伝導機構に着目し、(1) PbWO4およびCaWO4にLaとKを共ドープしてイオン伝導率の欠陥濃度の依存性を調べる。(2) 高温中性子回折データをマキシマムエントロピー法により導電パスを明らかにする。(3) 得られた導電パスについて結合原子価計算を用いたモデルと比較する。という3つの研究を行い、最終的にこれらの結果から欠陥構造とイオン伝導パスの相間を明らかにすることにした。 進捗状況で述べるように、現在までの研究で高温における導電率は欠陥濃度と強い相関をもち、高温中性子回折から推定された導電パスは、格子間酸化物イオンをもつ系と酸化物イオン空孔をもつ系では異なるものと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までにK添加CaWO4については包括的な電気化学的測定を行い、高温では輸率がほぼ1の酸化物イオン伝導体であることを明らかにした。高温X線回折の結果と合わせてEnergy and Materials Science and Engineering Symposiumでまとめて発表し、現在論文を作成中である。また共ドープ試料についてはイオン伝導率を測定しており、現在は密度測定により欠陥構造を調べている。 高温中性子回折実験はPb1-xLaxWO4+x/2系、Pb1-xLa2x/3WO4系およびCa1-xKxWO4-x/2系について800℃に至る温度領域で測定した。このうちPb1-xLaxWO4+x/2系はElectrochemical Societyおよび電池討論会で、Pb1-xLa2x/3WO4系は固体イオニクス討論会で発表し、現在データをまとめている。Ca1-xKxWO4-x/2系については一部を上記学会で報告しており、現在は組成を変えるなどして再実験を行っている。Pb1-xLaxWO4+x/2系の格子間酸化物イオンは室温中性子回折で推定されたサイトに近いサイトに存在し、これをつかって2次元的な導電ネットワークが存在することがわかった。さらに高温でのみ存在する第2の格子間サイトも見いだした。一方結合原子価計算から予想される導電パスは格子間サイトを再現していないことがわかった。これは欠陥構造が構造全体で平均化されるためと考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
現在、(1)共ドープ試料については粉末密度測定を進めており、今後は欠陥濃度と電気化学的特性を結びつけてゆく予定である。また、(2)中性子回折および(3)結合原子価計算は並行して進めており、格子間酸化物イオンをもつ系、カチオン空孔をもつ系ならびに酸化物イオン空孔をもつ系での核密度分布の相異について詳細に比較してゆく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
ビームタイムの都合で中性子回折実験を当初の予定より早めに行い、共ドープ系の密度測定とインピーダンス測定を後回しにしたため、この実験にかかる費用が繰り越された。
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備考 |
アカデミックデイ2017での紹介ページ
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