研究課題
平成29年度は、高温焼成炭素のNa吸蔵サイトについての検討と三元系黒鉛層間化合物(GIC)についての実験を中心に行うと共に、オペランドNMR測定設備をNa測定に対して最適化する作業を行った。セルロース系前駆体から作製された炭素において、低温での予備焼成の方法を変化させることでNa電池の負極としての容量に変化が生じること、またこの負極に吸蔵されているナトリウムの金属性が変化することを23Na NMRにより明らかにした。三元系GICにおいては、特に環状エーテルであるクラウンエーテルとナトリウム・カリウムが導入された化合物について、層内でのクラウンエーテルの運動状態をプロトン核(1H)NMRにより詳細に調べ、第一原理計算によるクラウンエーテル―金属錯体の安定構造に関する解析結果と併せることにより、層内における金属-クラウンエーテル錯体の構造を明らかにした。研究代表者らは鎖状エーテルであるジグライムが含まれた黒鉛負極の構造や分子運動について2016年に報告しているが、本研究結果はこれと比較できる重要なデータであり、現在成果を論文として投稿中である。オペランドNMR測定については、NMRプローブおよび対応電池の設計の最適化を進め、NMR内で動作するセルを作製することができた。しかし現状ではまだ容量維持率等の各種特性がコインセルに劣る部分が見られるため、平成30年度以降に引き続き改良に取り組むとともに、従来とは異なる設計の電池についても検討していく。
2: おおむね順調に進展している
炭素材料の容量変化、およびその解析について一定の成果が得られており、論文投稿の準備を進めている。また、黒鉛層間化合物についても十分な成果が得られており、論文投稿中である。
前駆体の違いによる高温焼成時の細孔構造の差異について、更なる検討が必要であるので実験・解析を引き続き進めていく。当初の予定通り、ヘテロ元素導入炭素についての実験も開始することを予定している。三元系GICについては、ナトリウム導入GICの研究を継続する他、ナトリウム以外のアルカリ金属導入化合物に対象を広げて研究を展開し、黒鉛層内でのアルカリ金属/溶媒間、もしくはアルカリ金属/炭素層間の普遍的な相互作用を明らかにする。オペランドNMR測定についても、平成30年度以降引き続き改良に取り組むとともに、従来とは異なる設計の電池について検討していく。
すべて 2018 2017 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 4件、 招待講演 4件)
RSC Advances
巻: 8 ページ: 9677~9684
10.1039/C8RA00252E
TANSO
巻: 2017 ページ: 188~197
https://doi.org/10.7209/tanso.2017.188