我々が開発した二重励起赤外光音響分光法を,様々な光触媒粒子に適用することによって,半導体微粒子中に存在する欠陥のエネルギー準位が光触媒活性に与える影響を明らかにすることを目的に実験を行った.昨年度までに確立された分析システムを用いて,様々な酸化チタン(IV)試料に対して系統的な解析を行ったところ,欠陥のエネルギー準位は主に結晶構造によって支配されおり,ブルッカイト型>ルチル型>アナタース型の順に,伝導帯電位から深い準位に電子トラップサイトが存在することが明らかになった.この成果を学術論文に投稿し,J. Phys. Chem. C誌に掲載された. また,二重励起赤外光音響分光法による評価の汎用性を示すために,光触媒材料として利用可能な市販の金属酸化物半導体粒子(チタン酸ストロンチウム,酸化タングステン(VI),酸化ニオブ(V),バナジン酸ビスマスなど)に本手法を適用したところ,種類に応じて電子トラップのエネルギー準位が異なることが明らかになった. さらに,可視光照射下で水素を生成することができることから,Zスキーム型水分解光触媒系の水素生成光触媒として注目されているロジウム(Rh)ドープチタン酸ストロンチウム(Rh:SrTiO3)に対しても欠陥のエネルギー準位の解析を行った.15000~8000 cm-1に価電子帯からRh4+への電子遷移およびRh3+とRh4+の間のd-d遷移に帰属されるブロードな吸収が観測された.Rh4+由来の吸収は紫外~可視光照射を行うことにより,その照射時間に伴い減少した.これは,Rh4+が還元されRh3+が生成したためと考えられる.このRh4+の消失(Rh3+の生成)挙動と,Rh:SrTiO3の水素生成活性は良い対応関係を示しており,このことから,還元生成したRh3+が活性向上のカギとなっていることを明らかにした.
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