研究課題/領域番号 |
17K06020
|
研究機関 | 京都府立大学 |
研究代表者 |
斧田 宏明 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 講師 (80360246)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 白色顔料 / 化粧品 / 光触媒活性 / 粒子サイズ制御 |
研究実績の概要 |
現在、化粧品用の白色顔料(顔料;水・油に不溶な着色用の粉末)として用いられている酸化チタンや酸化亜鉛は光触媒活性が強いため、日光による皮膚障害を招く恐れがあり、代替品の開発が求められている。このような背景から申請者は光触媒活性をもたないリン酸塩白色顔料を化粧品に応用する研究を行ってきたが、リン酸塩白色顔料は粒子の成長制御が難しく、粒径が大きいため塗りむらを生じやすい欠点がある。 そこで、本研究ではこれまでの研究成果を基に、酸化亜鉛微粒子をリン酸処理することにより、表面をリン酸亜鉛に変化させたコアシェル型顔料の作製を行っている。光触媒活性をもたないため皮膚障害の恐れがないうえに、均質かつ適切な粒子サイズをもつため滑らかな塗布が可能な新規化粧品用白色顔料を開発することが本研究の目的である。 当該年度では、本研究プロセスにおける基本的な検討項目として、リン酸溶液温度、振とう時間及びリン酸と酸化亜鉛の原料比について検討した。これらの項目は酸化亜鉛のリン酸処理について検討していく上で大きな影響を与えることが見込まれるものである。この検討の結果、30℃,40℃では反応温度として低すぎ反応の進行が遅いために光触媒の抑制が弱かった。一方、50℃にて長時間処理を行うと反応が過剰に進行し粒子が大きくなりすぎ、化粧品用白色顔料として適していなかった。したがって、50℃にて比較的短時間処理することが最適条件となった。さらに、亜鉛に対してリン酸の割合が低い条件下にて振とうすることが適していることが明らかになった。この検討結果を踏まえて、次年度以降の条件検討を行っていく。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
酸化亜鉛微粒子をリン酸中にて振とうし、表面をリン酸亜鉛に変化させた。本年度の計画は基礎的な条件である温度、時間、原料比について、その影響を明らかにすることである。そこで処理温度(30-50℃)、時間(1-6時間)の検討を行った。さらに原料である酸化亜鉛とリン酸の割合、P/Zn比を変化させた条件についても検討した。その結果、50℃、3時間、P/Zn=1/2にて光触媒活性を抑制しつつ、大きな粒子とならないことを明らかにした。 また、これまで高額の分析装置により行っていた粒子の滑らかさについて、簡便な装置にて評価可能であることを明らかにした。 以上の結果から、「おおむね順調に進行している」と判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度の研究により光触媒活性を抑制しつつ粒子が大きくなっていない新規白色顔料を作製することができた。しかしながら、光触媒活性は完全になくなっている状態ではなく、弱いながらも存在している。また、少量ではあるが粒子サイズが大きくなっているものも含まれている。そこで、さらなる条件を検討し、より化粧品用白色顔料として適した素材を開発する。また、リン酸塩を用いている一因として親水性があり、これが最終製品の保水性を向上させることが期待されている。今後の方針として、保水性化合物の添加を検討する。この添加は、これまでリン酸チタンやリン酸亜鉛において保水性向上と凝集抑制に有効であることを明らかにしており、添加による凝集抑制効果を検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた国際会議の日程が遅くなり、次年度開催となった。そのため国際会議参加費についても次年度対応となった。また、研究活動上必須である電気炉の老朽化が激しく、近いうちに新規購入の必要が見込まれるため、当初予定していた光沢計の購入を取りやめることにした。
|