研究課題/領域番号 |
17K06023
|
研究機関 | 大阪工業大学 |
研究代表者 |
東本 慎也 大阪工業大学, 工学部, 准教授 (70368140)
|
研究分担者 |
神村 共住 大阪工業大学, 工学部, 教授 (40353338)
中村 亮介 大阪大学, 学内共同利用施設等, その他 (70379147)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 量子ドット太陽電池 / 銅-インジウム硫化物コロイド |
研究実績の概要 |
本研究では、カドミウムなど有害物質を含まない太陽電池の素子を非真空系で作製し、電解液を必要としない銅-インジウム硫化物コロイドを光増感剤に用いた全固体型量子ドット太陽電池の創出に取り組んでいる。以下に具体的な目的を示す。 (1)全固体型量子ドット太陽電池を試作し,その有用性を確認する。 (2)CIS素子とエネルギーレベルがマッチするp型有機高分子半導体の探索、そしてp-n接合形態の最適化を行うことで、高効率な光誘起電荷分離を実現する。 (3)CIS素子界面での電子移動速度を評価し,得られた知見を太陽電池の開発にフィードバックする。 (1)に関して、 FTOガラス電極上にTiO2薄膜をスピンコーティング法により膜厚100 nm程度の高密度かつ高結晶性のdense-TiO2膜を作製し,ホール輸送材とFTOとの接触を防ぐことに成功した。その上から水熱合成法により作製したTiO2粉末,ポリエチレングリコール (増粘剤)、トリトンX (界面活性剤)、そして硝酸水溶液 (分散剤)を混合して、超音波処理を施すことで均質なペースト剤を調製し、スピンコーティング法により均一に塗布、続いて焼成することで、膜厚を0.5~1 マイクロメーター程度のメソポーラスTiO2薄膜の作製に成功した。CISコロイドは水媒体中で合成し、結晶性を高めるために、その溶液にマイクロ波照射することで、結晶性の高いCISナノコロイドを合成した。CISナノコロイドをTiO2薄膜に吸着担持させた。続いて、p型有機高分子半導体 (ホール輸送材)の1つである3-ヘキシルチオフェン(P3HT)をクロロベンゼンに溶かし、その後、基板を窒素気流中にてアニールし、蒸着装置により金を真空蒸着させた。その結果、発電効率は約0.5%程度でとどまっており、更なる高効率化に向けて開発を要する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
この研究計画では、CISナノコロイドなど太陽電池の素子を非真空系で作製し、環境に優しく低コストの全固体型量子ドット太陽電池 (QDSC) を創出する。平成29年度中に結晶性の高いCISナノコロイドの合成はできたものの、CIS (n型半導体) とホール輸送材 (p型半導体) とのp-n接合面でのエネルギーレベルのマッチングが不十分なために、p-n接合形態を最適化に至っていない。また、太陽電池の素子部分が大気中に曝されているために、光照射下での耐久性が不十分である。
|
今後の研究の推進方策 |
1)フェムト秒レーザーを用いた,過渡吸収法によるCIS素子接合界面での光電子移動過程の評価を行う。そして,反応速度を高速化するための知見をQDSCの開発にフィードバックする。 2)導電性FTOガラス基板上にナノロッドTiO2またはZnO を化学溶液析出 (CBD) 法によって構築する。オートクレーブ内の溶液のpH,温度,析出時間などを変化させて,ナノロッドの長さを制御する。その上にCISコロイドを担持する。ホール輸送材との相互貫入型接合 (相分離型) を採用して光電荷分離を促進させる。 3)CISナノコロイドとCdSの複合化またはn型有機半導体であるフェニルC61酪酸メチルエステル (PCBM) などを導入することで,太陽電池のエネルギー変換効率の向上を図り,既存の薄膜太陽電池や湿式太陽電池との優位性を示す。 4)本研究とは異なるアプローチとなるが,高い化学的,熱的安定性および不燃性で知られるイオン液体を電解質に使用し,擬固体化した量子ドット太陽電池の作製について検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
大学から支給された研究費を当研究費に充てることができたため。また、2018年度に試薬等の購入に用いる。
|