本研究では,新規可視光応答型光触媒である希土類含有ペロブスカイト型酸化物ATbO3(A = アルカリ土類)について,試料合成に固相法および液相法を駆使することで試料の結晶構造,化学組成,形態を制御し,未だ解明されていないATbO3の光触媒活性を明らかにし,希土類化合物群における可視光応答型光触媒探索の新たな指針を掲げることを目指している。 令和元年度は,Caを含むペロブスカイト型酸化物の合成を試みた。これまでに,平成29~30年度にかけてBaTbO3とSrTbO3を合成し,それらの光触媒活性を調べてきた。BaTbO3とSrTbO3については,ペロブスカイト型構造の試料が単相で得ることができる。しかしながら,イオン半径の小さいCaを含むCaTbO3について,ペロブスカイト型構造の試料を単相で得ることができなかった。そこでSrTbO3にCaを置換固溶させた固溶体試料の合成を試みた。 目的のペロブスカイト型固溶体Sr1-xCaxTbO3を合成するために,錯体重合法の合成条件を検討した。様々な合成条件を用いて検討を行ったが,ほとんどCaの固溶量を増加させることはできなかった。固溶体試料の光吸収特性を調べたところ,およそ波長500 nm以下の光を吸収することが分かった。BaTbO3では,波長550 nm以下の光を,SrTbO3では530 nm以下の光を吸収することが分かっているので,固溶体試料はBaTbO3やSrTbO3と同程度に青色LEDの光を吸収すると考えられる。 合成した試料の光触媒活性を調べるために,1 wt%のPt助触媒を担持した試料による50%メタノール水溶液の還元反応により評価した。しかしながら,光触媒活性はかなり低いことがわかった。試料が固溶体であるため,組成のムラなどが光触媒活性を阻害しているのではないかと考えている。
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