本研究では、SPring-8のBL23SUの超高真空槽内にてSi(111)-7×7清浄表面上に2原子層(monolayer、2-ML)および6-MLのハフニウム(Hf)超薄膜を作製し[Hf/Si(111)]、Hf 4f、Si 2p、およびO 1s内殻準位の光電子スペクトルを測定した。これらの結果より、Si(111)-7×7清浄表面上のHfは層状に成長した3種の化学状態(Si基板側より、HfSi_4、HfSi、Siを含む金属Hf層)が存在し、膜成長後もこれらは浸食することはなく存在し続けることが分かった。 次に、Hf/Si(111)に異なる並進運動エネルギー(E = 0.03~2.2 eV)を持つ酸素分子を曝露することで各層の反応進行を考察した。2-MLおよび6-MLの両試料は、熱酸素(0.03 eV)曝露によって表面のSiを含む金属Hf層の酸化がバリアレスで酸化進行するのに対し、界面層のHfSiやHfSi_4はほとんど進行しない。しかし、初期の金属ハフニウムの存在量の違いでわずかに界面組成に違いを示す。 一方、2.2 eVの酸素分子を照射すると、HfSiおよびHfSi_4の酸化の進行が確認され、界面には熱酸素曝露では存在しないHfシリケート種が存在する。Hfの膜厚が6-MLの試料は、表面の金属Hf層が厚いためHfO_2層が表面を覆っているが、Hf層が2-MLの試料はHfO_2層よりもHfシリケート成分が表面に析出して主成分となることが示された。 これまで得られた成果を比較すると、Si基板上のHf成長は、1)面方向、2)膜厚、3)加熱処理温度、によって、異なることが明らかとなった。さらに、表面界面各種は、酸素に対する活性が異なるため、異なる酸化状態を持つHfO_2膜を形成する。試料に照射する酸素分子の並進運動エネルギーを制御することで均一な膜を作製可能であることが示された。
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