研究実績の概要 |
植物の組織構造を最大限に利用して、高性能な電気二重層キャパシタ電極材料を作製する研究として、竹を原料として研究を進めてきた。竹を加圧熱水処理するとヘミセルロースであるキシランが選択的に加水分解されて水相に溶出できることが知られている。加圧熱水処理により竹からキシランをキシロオリゴ糖として取り出せば、キシロオリゴ糖を高付加価値製品として利用できる。加圧熱水後の竹の固体残渣を原料として高性能な電気二重層キャパシタ電極材料すれが、竹から段階的に高付加価値製品を製造する「竹のカスケード利用」が実現できる。植物の組織構造から特定成分が選択的に除去された状態は、存在する有機化合物の種類が減少することによる熱分解挙動の単純化の可能性と特定成分が溶出したことによる細孔の形成の可能性があり、多孔質炭素材料の前駆体として適している可能性がある。そこで、「竹のカスケード利用」を目指してを加圧熱水処理した後の固体残渣について昨年度に引き続き、この固体残渣を原料として多孔質炭素材料を作製する実験を進めた。これまでの昨年度までの研究の成果として、この固体残渣を原料として従来の薬品賦活の試薬(KOH, ZnCl2, H3PO4)を使用して賦活ができることを見出している。また、細孔径分布を制御することを目的として、メソ細孔を形成できる賦活(ZnCl2, H3PO4)とミクロ細孔を形成する賦活(KOH, CO2)の二種類の賦活方法を段階的に行う、二段階賦活を行った。その結果、当初想定していた、細孔径のピークが(ミクロ細孔+メソ細孔)のような細孔径分布とはならず、細孔径分布の広いミクロ細孔、のような状態になった。この材料の静電容量は一段階の通常のKOH賦活の試料と比較してわずかに性能向上が見られた。当初想定していなかった結果として原料から多孔質炭素材料までの収率が二段階賦活にしたほうが向上することがわかった。
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