本研究では、活性炭の細孔内部に可逆的な酸化還元反応を行う酸化ルテニウムあるいはルテノセンを高分散させることで、急速充放電特性と体積あたりの高容量化を両立した電気化学キャパシタ電極を実現することができた。 当初の目的では、気相雰囲気で活性炭にルテノセンを吸着させ、電圧を印加することで錯体を分解させて、細孔内部での酸化ルテニウムナノ粒子を高分散化させることであった。しかしルテニウム前駆体にルテノセンを用いた場合、活性炭細孔内に吸着したルテノセンの凝集体が電圧の印加によって再配列し、細孔内部で分子レベルで高分散化することがX線吸収スペクトル測定によって明らかにすることができた。その結果、ルテノセン分子が導電性の高い炭素表面と高表面積で接触することで、接触界面における急速な電荷移動が可能になり、急速充放電特性を得ることができた。しかもルテノセンとの複合化の際に活性炭粒子の体積膨張を伴わないため、体積あたりの高容量化を両立できることを明らかにした。 一方で、ルテニウム前駆体の代わりに有機ルテニウム錯体であるルテニウムアセチルアセトナートを用いた場合、気相雰囲気で活性炭に錯体を吸着させて電圧を印加しても電極としての容量を増加させることはできなかった。しかし錯体の吸着後に錯体が分解する温度で熱処理することで、活性炭の細孔内部でルテニウムナノ粒子を高分散させることができ、続いて得られた活性炭/ルテニウムナノ粒子に硫酸水溶液中で一定電圧を印加することで、ルテニウムナノ粒子を酸化させることに成功した。その結果、活性炭の細孔径以下に粒径を制御した酸化ルテニウムナノ粒子の細孔内での高分散化を実現し、活性炭粒子の体積膨張も伴わなかった。したがってルテノセンの場合と同様に、炭素表面と高表面積で酸化ルテニウムナノ粒子が接触することで、体積当たりの高容量化と急速充放電特性を両立することに成功した。
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