研究課題/領域番号 |
17K06035
|
研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
橋之口 道宏 同志社大学, 研究開発推進機構, 准教授 (60377801)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | アンモニア / 固体酸化物形燃料電池 / ペロブスカイト酸化物 |
研究実績の概要 |
アンモニア燃料を直接利用する固体酸化物形燃料電池の低温動作化に向けては、第一に燃料極(アノード)のアンモニア酸化反応に対する活性と耐久性の向上が必要である。500度程度の低温で高い活性・耐久性が期待されるペロブスカイト型酸化物燃料極触媒の探索を中心とするアンモニア燃料を直接利用する固体酸化物形燃料電池の基盤技術の開発を目的として、本年度は以下の研究を行った。 (1)400~600度の低温度領域で、ペロブスカイト型酸化物燃料極触媒単体でのアンモニア分解性能を調査するため、四重極質量分析装置と超高真空排気装置を購入し、それらを組み合わせて触媒性能評価装置を作製した。Niベースの燃料極触媒を標準試料に用いて、当該装置の動作確認を行った。 (2) 液相反応法や固相反応法を用いて、Mo金属を含有するペロブスカイト型酸化物:SrM1-xMoxO3-δ触媒(M= Fe)を合成した。液相反応法で合成した触媒は、固相反応法で合成した触媒と比較して、均一小粒径な粒子であった。この触媒を触媒性能評価装置を用いて調査した結果、一般的に固体酸化燃料電池に使用されているNiベースの燃料極触媒よりも、アンモニア分解反応に対して高い活性を持つことがわかった。さらに、耐久性試験から、アンモニア燃料に対して高い耐久性があることがわかった。 (3) 合成したペロブスカイト酸化物触媒を燃料極とするセルを作製し、それを用いて電気化学的評価手法を確立した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
(理由)当初予定の項目(1)触媒性能評価装置を作製並びにそれを用いた触媒性能の評価、(2)発電性能を調査するためのセル評価システムを構築、各項目について当初の計画に沿った成果を得ることができたため。
|
今後の研究の推進方策 |
(1) 触媒性能評価装置を用いて、合成した酸化物触媒のアンモニア分解性能を調査する。酸化物のMoの一部を、Co、Ni、Fe等のMoよりも窒素との結合が弱い原子を導入した酸化物触媒を作成し、触媒の組成がアンモニア分解速度に与える影響を系統的に調査し、触媒とN原子との相互作用に着目して、酸化物表面における活性の要因を明らかにする。
(2)アンモニア分解反応に優れた触媒を選択し、その材料を燃料極とする発電セルを作製して、その発電特性を評価する。燃料をアンモニア、水素と切り替えるなどして運転条件を変化させ、アンモニアの酸化反応に対する活性を調査する。
(3)長期運転試験前後の発電特性を比較し、触媒の化学的な安定性を調査する。発電後の燃料極の構造や燃料極と電解質との界面構造を電子顕微鏡で観察し、燃料極触媒として用いた場合の課題を明らかにする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
29年度、第43回 固体イオニクス討論会(山形)に参加し、成果発表を行う予定であったが、諸事情により取りやめた。そのため、国内旅費として予定していた予算が繰り越しとなっている。
上記のとおり、繰越金は、国内学会での成果発表のための旅費として使用する。
|