近年,マイクロ加工やナノテクノロジーの向上から部品,材料全体に対する最表面の割合が増加している.そのため,これまで無視できていた最表層の残留応力,微小欠陥などが無視できなくなり,表面層の構造評価が求められている.ラマン散乱分光法は,非破壊・非接触,大気中での測定が可能,高分解能という利点を有するが,一般的な可視光励起のラマン散乱分光法では,励起光の侵入長が長く,最表面を測定,評価することは困難である.この問題の解決方法として,励起レーザとして可視光より光の侵入長の短い紫外光を用いること,および,固体試料に金属粒子を形成することによる金属表面近傍の励起光・散乱光の増強という表面増強ラマン散乱(SERS)の2つを組み合わせた深紫外表面増強ラマン散乱に着目した. 令和3年度は,単結晶シリコン基板上の炭素膜のレーザー加工変質層への適用を進め,レーザー照射による表面層の炭化,欠陥生成について考察を行った.また,金属オーバーレイヤー層成膜時の増強効果について,光強度依存性から得られた結果が電場増強効果であることを支持する結果を得た.さらに,金属オーバーレイヤー層の成膜後の経時変化について,試料保管時の雰囲気による影響を検討し,酸化による増強効果の失活が観測された.また,蒸着後さらに加熱処理を行うことによる島状粒子の形状の変化の影響について検討を行った. 当初予定していた国際会議は新型コロナウイルスの感染拡大により,延期されたため発表することはできなかったが,オンライン開催されたレーザー加工関連の国際会議にて報告を行った.
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