研究課題/領域番号 |
17K06049
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
下川 智嗣 金沢大学, 機械工学系, 教授 (40361977)
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研究分担者 |
新山 友暁 金沢大学, 機械工学系, 助教 (00583858)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 塑性変形 / 力学特性 / 集団運動 / 非晶質構造 / 非平衡物理 / 分子動力学法 |
研究実績の概要 |
構造用材料の更なる高信頼性化に向けて,未解決問題である「変形素過程の協働的・連鎖的な集団運動と機械的性質の関係の解明」に挑むために,平成29年度は結晶構造から非晶質構造まで様々な原子構造を表現できる原子モデリングの開発を行った. 様々な構造の仮想的な材料モデルをコンピュータ内で表現するために,ここでは二種類の異なる原子半径を持つ仮想的な原子を用いた.本解析は二次元平面内で行う.二種類の原子をSとLとし,それぞれの半径を0.07 nm, 0.13 nm とした.この2種類の原子を合計で10,000個使用し,原子Sの割合を変化させた.原子Sの割合は1から99 %の間の11通りを設定した. また,上記の原子らの相互作用にはカットオフ距離で2階微分がゼロになるように調整したMorse ポテンシャルを用いた. Morseポテンシャルの深さ(凝集エネルギーに強く関与)に関係するパラメーターを変えることにより,各原子間の相互作用の強さを設定した.原子間相互作用が同じ種類の原子同士の場合,すなわち原子 L 同士,原子 S 同士の場合は, 結合力は同じとした.一方で,原子Lと原子S間の結合力については,結合力が異なる 6パターンを設定した. 熱処理によって得られた原子構造が,結晶構造をとるのか非晶質構造をとるのかを判別するために,無秩序変数を用いた.SとLの原子数が偏っている場合や異種原子間結合力が小さい場合,結晶構造を示した.一方,S原子の割合が40 % ~ 60 %で異種原子間結合力が大きな場合,非晶質構造を示した.ここで,上記の結晶構造モデルから非晶質構造モデルへ遷移する領域に混在構造モデルが出現した. このように結晶構造から非晶質構造まで様々な原子構造を表現できる原子モデリングの作製を行うことができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り,結晶構造から非晶質構造まで様々な原子構造を表現できる原子モデリングの作製を行うことができているため.
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は当初の研究計画通り,各原子モデルに対して単軸引張変形解析を実行し,変形素過程の集団運動を反映する応力降下量の規模とその発生頻度の統計的性質を計算する. また,非晶質と結晶構造が混在するモデルが得られたが,その塑性変形メカニズムと強度の関係に着目して詳細に検討を行い,結晶・非晶質界面の役割を明らかにしていく.
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