研究課題/領域番号 |
17K06057
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
黄木 景二 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 教授 (70281194)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | CFRP / インピーダンス / モデリング |
研究実績の概要 |
2018年度の研究項目は,層間強化型CFRP積層板の厚さ方向インピーダンスについて①LCR成分に空間分布を持たせることによってマクロインピーダンスモデルの定式化を行う,②インピーダンスの応力依存性データ(ピエゾインピーダン酢データ)を取得すること,である。①については2,8層のインピーダンス挙動についてLCRメータでインピーダンスを詳細に測定した結果,L成分がないことが実験的に示されたため,RC並列回路モデルを用いた周波数依存性を検討した。その結果,低周波数領域で顕著に現れる直流抵抗成分Rのバラツキが大きい,および,高周波で顕著に現れるキャパシタンス成分Cのバラツキが小さい,という結果からR成分のみに空間分布を持たせればよいことが判明した。この空間分布は層間を貫く導電繊維(ILCF)のランダムな分布に起因している。次に,これに基づいて,RC並列回路ミクロユニットセルからなる1プライ積層板の等価インピーダンス回路モデルを考案し,nプライの総和をとった積層板のインピーダンスを定式化した。次に,ユニットセル内のILCFの個数確率fを仮定し,Rのランダム空間分布を考慮した導電率(抵抗率)を考えることにより,寸法効果とバラツキを予測できる個数確率モデルを構築した。本モデルによるインピーダンス挙動は実験結果と定性的に一致していることが示された。さらに,適当なfを仮定した個数確率モデルが2017年度に確立した対数正規分布畳み込み積分を用いた数理モデルと等価であることが示された。一方,②のピエゾインピーダンスデータについては,非層間強化型積層板のデータについては整理できたが,層間強化型については2019年度初頭にデータベース取得が完了する見込みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績概要に記載のとおり,①についてはモデリングが完了し,さらに2つの異なる数学的モデルの等価性を示すことができたことは計画以上の成果が得られたと判断される。 一方,②については既存の非層間強化型積層板のデータ整理はできたが,層間強化型積層板のデータベース取得が完了していない。その原因は,層間の効果を抽出するために,単一の層間をもつ2プライ積層板を作製したが,非常に薄いため,電極形成と負荷を加えながらのインピーダンスデータ取得に困難が生じたためである。しかし,これに対する解決法(サンプル形状の工夫など)が判明したため,2019年度の早い時期にデータベース化が完了する見込みである。 以上から,おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度の研究項目は①ピエゾインピーダンスの温度依存性データ取得,②ジュール熱解析である。①については,薄い2プライ積層板で測定する手法を確立したため,恒温槽付き万能試験機を用いて,ピエゾインピーダンスデータベース取得は迅速に遂行できる予定である。同様により厚い8プライ積層板についてピエゾインピーダンスデータベースを測定することにより,構築したインピーダンスモデルの適用可能性が検討できる。 ②については,必ずしも①のデータベースがなくても,これまでに確立したモデルとインピーダンスデータさえあれば,FEMなどの数値解析手法でジュール熱解析は可能であり,年度内に完遂することが可能である。 ①,②ともに研究スピードを上げるために,研究協力者として2名の学生とともに実験を進める。また,電気工学を専門とする学内研究者に助言を求める。
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