研究課題/領域番号 |
17K06058
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
山田 宏 九州工業大学, 大学院生命体工学研究科, 教授 (00220400)
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研究分担者 |
田中 マキ子 山口県立大学, 看護栄養学部, 教授 (80227173)
森田 康之 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 教授 (90380534)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 軟部組織 / 皮下組織 / 静脈 / ゲル素材 / マットレス / せん断 / 粘弾性 / 横弾性係数 |
研究実績の概要 |
と畜解体したブタの足部軟部組織のせん断試験として,まず皮膚・皮下組織・骨格筋の3層からなる組織層の皮膚表面を5mmずらし,応力緩和させた.次に皮膚と皮下組織の2層からなる組織層の表面を2mmずらして戻すことを4回繰り返し,5回目に2mmずらした後,応力緩和させた.その結果,前者の試験では皮下組織のずれ変位に対して力は概ね上に凸の曲線を示した.後者の試験では皮下組織は2回目の繰返し以降は概ね安定して大きなヒステリシス曲線を描いた.前者のホルマリンあるいはアルコールで固定した皮下組織に対してマッソントリクローム染色した組織切片の光学顕微鏡観察とX線CTによる観察を行った結果,皮下組織にはシート状の膠原線維の層と脂肪組織の集合体が観察され,また,隙間が多く観察され,構造と皮下組織層のずれ挙動との関係が示唆された.また,前者及び後者いずれの皮下組織に対して1次元の標準線形固体モデルを適用して応力の時間変化を記述できた. 被験者(ヒト)の上腕部の皮静脈を対象として,軟部組織の圧縮とずれに対する皮静脈の変形挙動を超音波診断装置と精密ばかりで調べた.超音波診断装置のプローブを用いて皮膚表面を徐々に圧縮した結果,皮静脈の内腔形状の変形と圧縮力の関係が得られた.また,皮膚表面に周方向のずれ変位を与える実験を行った結果,皮静脈が閉塞する傾向は見られなかった. 褥瘡予防ウレタンフォームマットのゲル層(エクスジェル)とゲルシート付ウレタンフォームマットレス(ピュアレックス)のゲル層を対象として切り出し,一定圧縮ひずみ条件下での単調せん断試験と両振りの繰返しせん断試験を行い,3軸の力センサを用いて力成分と変位成分の時間変化を調べた.その結果,圧縮ひずみの大きさにかかわらず,ゲル素材の横弾性係数は概ね1kPaで,横方向に変位拘束がない場合には,本素材はせん断力の作用に対して大きくずれることが分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
と畜解体されたブタの後足の皮膚表面への圧力・ずれ負荷試験による応力-ひずみ関係の同定については,ずれ負荷に対してのみ実施し,複合負荷条件が課題として残った.血管内圧負荷条件下でのX線CT撮像による組織内の血管形状の測定については,ブタ後ろ足の代わりに被験者(ヒト)の皮静脈を対象として超音波診断装置を用いて実施した.マットレス素材をブタ軟部組織表面に押し付けた各組織の変形測定については,ブタ後足の皮膚は硬すぎるので実施せず,ゲル素材とウレタンフォームの層を有するマットレスへの複合負荷試験のみ実施した.ゲル素材とウレタンフォームの層を有するマットレスに曲面を押し付けたX線CT撮像に基づくセルの変形と構成式による予測との比較,画像相関法による変形場の解析については実体顕微鏡の動画撮影等で特徴を把握したが,画像相関法による解析や中実とみなした有限要素解析結果との定量的な比較が未実施である.
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今後の研究の推進方策 |
軟部組織とマットレスが血行障害・血管閉塞に及ぼす影響を解明し,褥瘡予防に必要な定量的根拠を提示するという目的を達成するため,ブタ軟部組織の材料力学試験では皮膚表面への圧力とずれの負荷に対する皮下組織の力学的応答を測定し,応力-ひずみ関係を同定する.被験者(ヒト)に対する測定では,皮膚表面への圧力・ずれの負荷の下で皮静脈の閉塞の測定や毛細血管網の血行状態の変化を測定する.また,貼付されたドレッシング材の力学的影響について,皮膚表面のひずみ測定と有限要素解析を組み合わせて解明する.ゲル素材とウレタンフォームの層を有するマットレスについて,曲面を押し付けて圧力とずれの複合負荷の影響と特にずれに対する褥瘡予防効果を定量的に解明する.
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次年度使用額が生じた理由 |
残額5,579円は実験用物品の購入において残額が生じたことによる.次年度は本残額と合わせて実験用物品の購入を行う.
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