研究課題/領域番号 |
17K06059
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
池田 徹 鹿児島大学, 理工学域工学系, 教授 (40243894)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 界面応力 / ミスフィット転位 / 分子静力学 / 分子動力学 / 異方性弾性論 / 双晶 / エピタキシャル成長薄膜 |
研究実績の概要 |
Si上にGeをエピタキシャル成長させた試料について,FIBで界面付近の観察試料を作成し,STEMを使用して界面付近の原子像を観察した。その結果にGPAを用いて,Si-Ge界面付近のひずみ分布を計測した。Si-Ge界面には,ミスフィット転位と見られる転位が観察されたが,そのミスフィット転位から,双晶変形が発生していることが観察された。このことより,観察したSi-Ge界面は,Geのエピタキシャル層が厚すぎるためにミスフィット転位から双晶が発生し,Si側の引張ひずみが緩和されていることが観察された。 一方,分子静力学を用いて解析したひずみとSTEMで観察したひずみを比較すると,Ge側のひずみはある程度一致しており,ミスフィット転位の間隔とその周りのひずみもある程度の一致が見られた。しかし,Si側のひずみは,分子静力学で解析したものの方がはるかに大きく,双晶の発生によりSi側のひずみが緩和されていることがわかった。 また,分子静力学を用いて解析したひずみ分布は,異方性弾性論で解析したひずみ分布と良く一致しており,ミスフィット転位が発生した結晶界面のひずみは,弾性論で良く近似できることを示している。 Ge結晶に転位が入る限界膜圧は,既存の研究により明らかになっているので,ミスフィット転位周りの特異応力,ひずみ場の大きさで,双晶が発生する限界値を表すことを計画している。このことが可能になれば,半導体素子の形状や,中間膜の存在によって双晶の発生を抑えるようなエピタキシャル膜の構造を制御できる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実際にエピタキシャル成長薄膜の界面近傍のひずみ分布を測定し,その分布を分子静力学,異方性弾性論の結果と比較することが可能となったので,概ね研究は順調に進展している。エピタキシャル成長膜では,膜圧が厚くなるにつれて応力が大きくなるが,その限界においてミスフィット転位から双晶が発生することがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
エピタキシャル成長膜で膜圧が大きくなると結晶構造が崩れることは既存の研究で知られているが,そのメカニズムとしてミスフィット転位からの双晶の発生が大きな主要な原因であることがわかった。そこで,その限界値を,ミスフィット転位周りの特異応力場における特異応力場の強度を指標化することで,定量的に予測する方法の確立を目指す。 このことが可能になれば,エピタキシャル成長膜における双晶の発生を予測できる様になり,エピタキシャル成長膜の設計手法を確立することが可能になると考えられる。 そこで,まず,Si上のGe膜について,その限界厚さにおけるミスフィット転位周りの特異応力場の強度を指標化し,より定量的な評価法と結晶膜設計手法の確立を目指す。 このことが可能になったら,次にSi-SiGe薄膜界面のひずみ場の観察と解析を行う予定である。さらに,Si-Ge膜で確立した設計方法の有効性について検証をおこなう。 さらに,分子動力学によって,エピタキシャル成長膜の生成シミュレーションを行い,解析によって,ミスフィット転位からの双晶の発生限界を予測する方法について検討を行う。もし,このような手法で,自発的にミスフィット転位から双晶が発生することを予測できれば,計算によって材料の破壊限界を知ることができることになる。解析によって,材料の破壊限界を予測することは誰も実現できていないが,ナノオーダーの破壊であれば,予測できる可能性もある。可能となれば画期的な成果となることが期待できる。
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