研究実績の概要 |
半導体の上に,別の薄膜結晶をCVDなどで堆積することにより,半導体に引っ張り応力を作用させることで,半導体中の電子や正孔の移動速度を加速するひずみシリコンなどの手法が注目されているが,堆積する薄膜層が厚くなりすぎると,薄膜の破壊が生じて機能が発現できなくなるため,限界の厚みがあることが知られている. 格子定数の異なる結晶の界面では,両者の格子定数の違いによる応力を緩和するためのミスフィット転位が自発的に導入される.このミスフィット転位の応力は,ミスフィット点で無限大となり1/r (rはミスフィット点からの距離)の特異性をもつ.そこで,1/rの特異性にかかる係数を算出して,特異応力場の厳しさを調べることにした.Si-Ge, Si-SiGeについて,分子静力学を用いて,ミスフィット転位周りの特異応力場の強度に及ぼす,薄膜厚さの影響を調べた. その結果,Si-Ge系ではほとんど違いが検出できなかったが,Si-SiGeでは,明らかに50オングストローム以下の領域で,応力場の厳しさを示すパラメーターの減少が見られた.このことから,ある厚みよりも薄膜が薄くなると,ミスフィット転位周りの特異応力場の厳しさが減少することを定量的に検出できた.Si-Ge系で,特異応力場の厳しさを示すパラメーターの減少がはっきりしなかったのは,減少が生じる薄膜厚さが非常に薄い領域であるため,分子静力学のミスフィット転位周りの応力解析値の誤差に埋もれてしまったものと考えられる.今後,連続体力学による解析などを用いて,より詳細な解析をする必要がある. 3次元異方性異種材接合角部の特異性解析において,Stroh Formarizm を用いた2次元異方性異種材接合角部の場合と,固有関数の値を揃えるように正規化し,2次元解析と3次元解析の互換性を確立した.
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