研究課題/領域番号 |
17K06060
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研究機関 | 高知工科大学 |
研究代表者 |
楠川 量啓 高知工科大学, システム工学群, 教授 (60195435)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 圧電セラミックス / 傾斜機能材料 / 電気泳動法 / 3点曲げ強度 |
研究実績の概要 |
昨年度確立したPNN-PZT傾斜機能圧電材料の電気泳動堆積法(EPD)による成形条件プロセスに改良を加えて成形厚さを向上させることができた.この手法に基づいて成形,焼結した材料について,静的強度特性を調査した.材料は0.55PNN-0.45PZT(以下A材)と0.15PNN-0.85PZT(以下B材)の2種類でA材100%からA : B = 33 : 67 までの6段階で混合濃度を変えた懸濁液を用いて成形した傾斜機能材,A材およびB材の EPD 成形単層材および比較のための通常の加圧成形による各材料の試験片を用いた.自作の曲げ試験機を用い,スパン12 mm,クロスヘッドスピード 0.5 mm/minの条件で3点曲げ試験を行った. 通常の加圧成形による両材料の曲げ強度はA材,B材ともに約70 MPa であったが EPD による材料の曲げ強度はこれよりそれぞれ 60% および 34% 程度まで低下した.また傾斜機能材料における曲げ強度は材料単層材の強度よりもさらに強度が低下した.各試験片の破断応力をワイブルプロットすると,EPD による材料の形状係数は加圧成形材のそれの1/2 ~ 1/3 程度の値となり,EPD による材料では強度のばらつきも大きくなることがわかった. 破面観察の結果,EPD法による材料には多くの空隙が確認された.このプロセスでは加圧工程がないためで,これが強度低下の主たる原因である.さらにEPDによりB材の強度低下が著しくなったが,これはEPD法で整形したB材は焼結性が悪化していたためであった.この理由についてはまだ明らかではない.また,傾斜機能材料の破面には,懸濁液の濃度を変更して堆積させたときの境界が明瞭に確認された.この境界ではさらに多くの空隙が見られ,EPD法による傾斜機能材料の強度低下の原因となっていた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画において,平成30年度以降では電気泳動法(EPD)により成形した傾斜機能圧電材料の静的および疲労強度特性評価,ならびにアクチュエータとしたときの寿命評価を行うものであった.今年度は研究で用いている2つのPNN-PZT系圧電材料のEPD単層材ならびにこれらを用いた傾斜機能材について3点曲げ試験を行い,静的強度特性を評価することができた.得られた結果から,本研究で使用している EPD成形プロセスによる材料内には多くの欠陥を含むことがわかり,強度特性向上のプロセス改善の検討を要すると考えられる.しかしながら,基本的プロセス手法の確立とそれによる材料の強度特性の把握という点で,ほぼ順調に進展しているとした.
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今後の研究の推進方策 |
前項で述べたようにPNN-PZT系圧電材料のEPD堆積条件を確立できたものの十分な強度特性を有する材料の作製には至っていない.そこで最終年度としてはその強度向上のためのEPDプロセス手法改良の検討を行う.さらにこの改良プロセスにより成形した材料の疲労特性についても調査し,本材料を実用に供する上で重要となる寿命評価を行い,研究をまとめる予定である.
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