研究課題/領域番号 |
17K06062
|
研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
米津 明生 中央大学, 理工学部, 教授 (40398566)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 多孔質高分子膜 / 変形 / 破壊 / その場観察法 / 有限要素法 |
研究実績の概要 |
本研究では,多孔質高分子膜(ポーラスポリマーメンブレン)の変形と破壊の力学モデリング法を構築する.はじめに,X線CT,走査型電子顕微鏡,原子間力顕微鏡などの観察装置を用いたその場観察用負荷装置を開発し,負荷中の細孔(マイクロ・ナノポア)構造のミクロ力学場の検討,さらには全視野画像計測による変位場計測法を用いて高分子膜の巨視的な変形と破壊特性(力学応答)を評価する.なお,観察装置は対象材料のポアサイズによって使い分ける.そして,細孔形状の3次元構造をモデル化した有限要素法により,多孔質高分子膜の力学モデリング法を構築する.つまり,実際のランダム性を考慮した細孔構造モデルを構築することで,巨視的な力学応答のみならず,負荷中に変形する細孔のミクロ構造シミュレーションを可能にする.したがって,本研究ではマイクロ・ナノスケール細孔(マイクロ・ナノポア)を有する多孔質高分子膜の変形および破壊のモデリング手法を構築し,機械的耐久性の向上を目指した力学設計や膜分離(ろ過)性能の寿命検討などを材料創製の段階から提案できるようにすることを最終の目標としている.
今年度は,3次元微視構造のFEMモデル化について深く検討した.前年度に実施した走査型電子顕微鏡による各種サンプルの微視構造観察の結果に基づいて,3次元FEMモデルを構築した.最初にユニットセル構造を仮定し,空間充填を実現するケルビン構造体を作成した.その変形解析を行い,ユニットセル全体の大きさ,骨格寸法,セル構造の配置,境界条件などの影響を検討した.その際にはFEM要素の種類や,入力する弾塑性特性の影響も調べて,マクロ変形へ及ぼす影響を系統的に調べた.一方,ミクロ構造を検討するうえでは,実材料の不均質性を表現する必要があるため,その手法についても検討を始めた.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,マイクロ・ナノスケール細孔(マイクロ・ナノポア)を有する多孔質高分子膜の変形および破壊のモデリング手法を構築する.これにより,機械的耐久性の向上を目指した力学設計や膜分離(ろ過)性能の寿命検討などを材料創製の段階から提案できるようになる.本計画の大要は,(1)その場観察負荷装置の開発,(2)変形・破壊の力学モデリング手法の構築,(3)実用を想定した力学問題への展開 である. 本研究は3年計画であり,2年目である平成30年度は主に有限要素法によるモデル化の開発に従事し,単軸引張試験による変形挙動の数値解析法を検討した.これは力学モデルを構築するうえで極めて重要な項目であり,本研究課題達成の成否を握っている.ケルビン構造体で3次元微視構造モデルを作成でき,単軸引張変形挙動について検討できた. 得られた成果は国際学術誌(査読付きジャーナル),国際会議および国内学会などで広く公表している.
|
今後の研究の推進方策 |
上述のとおり,本計画の大要は,(1)その場観察負荷装置の開発,(2)変形・破壊の力学モデリング手法の構築,(3)実用を想定した力学問題への展開 である. 今後の平成31年度はモデリング手法(解析法)の高度化を主に行い,前年度までの実験結果と照合させる.とくに最後の年度になるため,本研究の進化と成果統合の段階に位置づけられるため,クリープや多軸負荷,き裂進展問題など複雑な力学状態へ展開できるような,普遍的な力学モデリング法の開発を目指す.
|