本研究では,多孔質高分子膜(ポーラスポリマーメンブレン)の変形と破壊の力学モデリング法を構築する.はじめに,X線CT,走査型電子顕微鏡,原子間力顕微鏡などの観察装置を用いたその場観察用負荷装置を開発し,負荷中の細孔(マイクロ・ナノポア)構造のミクロ力学場の検討,さらには全視野画像計測による変位場計測法を用いて高分子膜の巨視的な変形と破壊特性(力学応答)を評価する.なお,観察装置は対象材料のポアサイズによって使い分ける.そして,細孔形状の3次元構造をモデル化した有限要素法により,多孔質高分子膜の力学モデリング法を構築する.つまり,実際のランダム性を考慮した細孔構造モデルを構築することで,巨視的な力学応答のみならず,負荷中に変形する細孔のミクロ構造シミュレーションを可能にする.したがって,本研究ではマイクロ・ナノスケール細孔(マイクロ・ナノポア)を有する多孔質高分子膜の変形および破壊のモデリング手法を構築し,機械的耐久性の向上を目指した力学設計や膜分離(ろ過)性能の寿命検討などを材料創製の段階から提案できるようにすることを最終の目標としている.
今年度は,前年度に確立した不均質な3次元微視構造のFEMモデルを用いて,弾性変形,弾塑性変形およびクリープ解析を行った.この微視構造は,FESEMなどで観察した微視構造を再現した状態であり,また不均質性も再現できている.そして,得られたFEM解析結果を実験と比較して,その有効性について検証した.ひずみ10%くらいまでの変形については,実験の変形挙動を再現できることに成功した.さらには,二軸引張試験機の開発やデジタル画像相関法による変形計測に着手し,今後の研究展開を明確に提示できた.
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