研究課題/領域番号 |
17K06064
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
杉浦 隆次 日本大学, 工学部, 准教授 (40431522)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 微視損傷形成モデル / 高温力学特性 / 余寿命推定 |
研究実績の概要 |
平成29年度は,超々臨界圧(USC),および次世代の700℃級超々臨界圧(A-USC)発電プラントを構成する材料であるW添加9-12%Cr鋼,Ni基超合金,Ni-Fe合金およびその溶接継手材の準備と,これらの材料における極初期から寿命末期に至る損傷の連続追従観察と高温力学特性を把握することを目的とした実験システムの構築を目的とした.まずはこれらの材料を実機の主要配管溶接継手と同じ溶接施工条件および方法で作成した.当溶接継手材の作成は,研究協力者の協力を得て行った.さらに,この溶接継手材から,連続観察実験用の試験片を採取し,本実験へ向けた予備試験を実施し,従来観察が困難とされていた脆性材料の微視損傷の発生・形成および微視き裂成長挙動を局所的段階から経時的に追従観察システムを構築した.さらに,この実験によって損傷を与えた試験片に対して,FE-SEM/EBSD-OIMによる結晶方位解析の実施に向けて,まずは,表面粗さ等の観察試料表面状態および解析範囲やステップサイズ等のEBSD解析条件が取得データへ与える影響について調査し,解析における最適条件を検討した.本解析条件は,ミクロ構造のデジタル解析技術を走査型電子顕微鏡(SEM)観察へ応用するための重要な知見である.さらに,この解析結果と実験により得られる高温力学的挙動との対応関係について,予備実験結果から模索検討し,結晶方位解析に基づく新たな損傷評価指標の確立へ向けた調査を実施した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究において,試験材料の入手および実機と同じ施工方法で溶接継手材を作成することが緊要な課題であったが,研究協力者の支援により,試験材料の調達と試験片の作成を行うことができた.またこの試験片を使った微視損傷の連続追従観察実験の予備試験で,従来観察が困難とされていた脆性材料の微視損傷の発生・形成および微視き裂成長挙動を局所的段階から経時的に追従できる可能性を見出すことができた.さらに,ミクロ構造のデジタル解析技術を走査型電子顕微鏡(SEM)観察へ応用する本研究では,表面粗さ等の観察試料表面状態および解析範囲やステップサイズ等のEBSD解析条件が取得データへ与える影響が懸念されたが,予備試験を通して,最適な解析条件を見出すことができた.このことは,ミクロ構造のデジタル解析技術を走査型電子顕微鏡(SEM)観察へ応用するための重要な知見である.以上,これらのことより本実験の実施へ向けた実験環境とその条件が整ったことから,概ね計画通りに研究を実施できていると考える.
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度では,初年度で構築された実験システムを用いた微視損傷の連続追従観察試験を実施する.また損傷が与えられた試験片に対してEBSD/OIM解析を実施し,先の実験によって与えられたさまざまな損傷形態との定量的関係性から,微視損傷評価指標を確立する.またこの微視損傷評価指標の普遍性およびその適用範囲を明らかにするための検証実験を実施する予定である.さらに損傷同定指標から,転位の導入や高温拡散の結果として生じる結晶粒の格子回転を明らかにし,この特異な挙動を組み込んだ結晶粒異方性シミュレータを構築する予定である.最終年度ではこれらの過程と結果から,高温微視損傷形成モデルの構築とその応用として,高温構造健全性を支配する多軸応力場での局所的微視損傷発現機構を解明する予定である.これらのことは当初の研究計画通りである.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度は設備備品としてデジタルマイクロスコープ(KEYENCE VHX-2000)を申請し,既存の設備である損傷観察試験機に導入することにより,局所段階からの経時的な損傷やき裂発生・成長等の観察を行うことを予定していた.そこで本申請装置の導入にあたりデモ機を用いて既存設備への設置方法の検討,および検証実験を実施していため,本装置の未購入により次年度使用額が発生した.このことについては,さらなるデモ機による取得データの検証を行い,次年度で導入を検討する.
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