研究課題/領域番号 |
17K06069
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研究機関 | 大阪工業大学 |
研究代表者 |
西川 出 大阪工業大学, 工学部, 教授 (90189267)
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研究分担者 |
脇 裕之 岩手大学, 理工学部, 教授 (30324825)
高橋 英和 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (90175430)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ジルコニア / シリカ / コンポジットレジン / 疲労強度 / デジタル画像相関法 |
研究実績の概要 |
コンポジットレジンの有力な強度向上手法としてクラスターフィラーの導入を検討した。クラスターフィラーの特徴的な形状により、従来型のコンポジットレジンに比べ飛躍的な静的強度、疲労強度向上が実現できることがわかった。さらに開発したコンポジットレジンの臨床応用への道を開くために、弾性率の調整を主目的としたフィラーの配合検討を行った。ここでは従来型であるシリカフィラーに加え新たに独自手法によるジルコニアフィラーを作製し、これを用いて新しいハイブリッドコンポジットレジンの調合を行った。得られたジルコニアフィラー配合コンポジットレジンの疲労強度はこれまに得られた中で最大のものであり、安定度の高い材料となった。また弾性率も自然死に非常日数蹴ることが可能となったと同時に、経年劣化、負荷荷重による劣化に対してもほぼ一定値を保つ安定的な材料であることも確認できた。さらにこの材料の強化機構の発現をめざして微細構造の調査のための観察手法であるデジタル画像相関法の改良に取り組んだ。具体的には顕微鏡下でのデジタル画像相関法による観察手法の確立と混合モード変形に対するデジタル画像相関法の適用である。前者については金属材料の中でも結晶粒径を整えやすい純銅に対して結晶ごとの微小変形を詳細に分析できるレベルにまで観察法の開発が進んだ。また後者については混合モード下における斜めき裂の応力拡大係数や形状情報の正確な取得が非接触で行えることができる段階まで開発が進んでいる。すなわちこれらの観察手法はコンポジットレジンの微視観察へ応用できる段階にまで到達している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シリカフィラーベースのコンポジットレジンの疲労強度データとジルコニアセラミックスフィラーベースのコンポジットレジンの疲労強度データは昨年10月に開催された日本歯科理工学会にて研究発表し、数多くの歯科材料メーカーや大学からその有効性について認識されたことに加えて、今年の秋に開催される日本歯科理工学会にて公表し、有力な組み合わせであることの提案を歯科材料分野に行う予定である。デジタル画像相関法の開発についてはすでに数多くの公表をおこなっている。昨年12月に開催された日本材料学会破壊力学シンポジウムで発表し、その有効性が認められたこと、さらには今年の5月に開催予定の日本材料学会学術講演会、6月に開催予定の日本非破壊検査協会総合シンポジウム、8月に開催予定の日本実験力学会年次大会にて発表し、その有効性について学会の判定を受ける予定である。
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今後の研究の推進方策 |
開発してきたデジタル画像相関法による微小変形計測システムを用いてジルコニアハイブリッドコンポジットレジンの変形特性を解析するとともに、これを分析し、さらに強化機構を発現できる組織構造の構築に研究段階を進める。これにより開発したコンポジットレジンの静的強度、疲労強度強度向上に加えて、弾性率の生体適合性をさらに高める。一方、摩耗特性と疲労強度特性はその強化メカニズムが異なり、それぞれの強度特性はトレードオフの関係になることがわかっている。これを根本的に打破するべく、異種のフィラーを混合させる手法の摩耗特性向上への有効性を確認する。すなわちジルコニアの摩耗特性の良さを全面に引き出すためにクラスターフィラーの構造を考える。まず、クラスターフィラーの外表面にジルコニアフィラーを集合させることによる表面高密度型ジルコニアクラスターフィラーの作成を試みる。これを用いて耐摩耗性の高いコンポジットレジンの開発を行う。 環境中の強度低下抑制 口腔内環境としてエタノール溶液環境、乳酸溶液環境があげられるので、これらの環境下であっても強度向上効果が持続するかどうかを調べる。劣化が起こるようであれば、界面における剥離を押さえるために界面保護の手法について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
レジン作成のためのフィラー作成費やレジン調合のための薬品が安価に入手できたことによる剰余金であり、次年度へ繰り越して同様の消耗品購入費として充てる予定である。
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