研究課題/領域番号 |
17K06077
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
阪口 龍彦 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00403303)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ネスティング / スケジューリング / 精密板金加工 / 環境適応 / 進化型手法 |
研究実績の概要 |
近年の製造業においては,環境にやさしいものづくりを実現しつつ,納期を遵守した高効率な生産を行わなければならない.その実現のためには,設計情報と生産情報を合わせて有効活用することが不可欠となる.本研究では,精密板金加工生産システムを対象に,製品加工時の加工レイアウトとスケジュールの同時最適化問題を,異環境適応型進化手法により解決する. 生産計画の決定であるスケジューリングと,加工レイアウトの決定であるネスティングは,決定の対象が異なるため,従来は別々に最適化が行われてきた.しかし,両者には関係性があるため,全体的な効率化のためにはこれらを同時に考慮する必要がある.本研究では,両者が異なる問題を対象に最適化を行うという点に着目し,これらを異なる環境と見立て,各環境において進化型手法により最適化しながら,定期的に環境間で解を交換することで,互いが与える影響をも考慮する方法を確立する.これを実現するために,まず,スケジューリングおよびネスティングが,互いに部品情報に基づきそれぞれの解を決定することに注目し,部品情報をもとに共通の遺伝子配列を設計した.さらに遺伝子の適応度もネスティングとスケジューリングで共通化するために,コストを基準とする評価指標を定義した.また,異なる環境間で個体が移住するメカニズムを実現するための処理フローを構築した. 提案手法の有効性を検証するために,ネスティング・スケジューリングシステムのプロトタイプを開発し,計算機実験を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
精密板金加工のネスティング・スケジューリング問題に対して,異環境適応型遺伝的アルゴリズム(以下,異環境適応型GA)により解決することを主眼とする本研究では,まず,ネスティングおよびスケジューリング環境において進化型手法すなわち遺伝的アルゴリズムにより解を探索できる必要がある.そのためには,対象問題の遺伝子コーディングが必要であるが,本研究では,両者に共通する部品情報に基づく遺伝子表現を設計した. 次に,本研究が提案する異環境適応型GAでは,環境移住によるトレードオフ関係の考慮が大きな特徴の一つであるが,環境を移行するためには評価関数を共通化する必要がある.そのため,コスト基準の評価基準を定義した.さらに,環境移行を実現するための移行アルゴリズムを提案した.以上は,当初の研究実施計画における検討項目であり,これらを実現できたことから,初年度の計画はおおむね順調に進展したと言える.
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今後の研究の推進方策 |
精密板金加工におけるネスティングとスケジューリングの関係は,トレードオフ関係である場合と,そうでない場合がある.すなわち,競争関係にある場合と,協調関係にある場合があり,これは問題設定に依存する.競争関係にある場合は,各環境で一定期間進化した後,環境移行をする方が進化が促進するが,協調関係の場合は,頻繁に環境移行を行うことで両者をバランスよく進化させることができると考える.そこで,今後の研究においては,異環境適応型進化の過程で解集合の特性分析をリアルタイムに行う手法,および環境移行間隔等のパラメータをリアルタイムにチューニングする方法等について検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
提案手法のプロトタイプ実装に時間を要し,比較実験が十分に行えず,比較実験用の最適化ソルバと実験用計算機を未購入のため差額が生じた. 今後,数値実験用計算機資源および周辺機器を拡充する.
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