研究課題/領域番号 |
17K06079
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
臼杵 年 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (10176670)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | グラフェン / チタン合金 / 切削加工 / 工具損傷 / 凝着 / ホットブロー加工 |
研究実績の概要 |
チタン合金切削時の凝着層の結晶微細化防止のため以下の事項を実施した。 ・超硬および同一母材のTiAlNコーティング工具にテキスチャーの有無、Cu蒸着の有無、グラフェンCVD合成の有無とグラフェンの電気分解法による作成した薄片を含む溶液のスプレイ塗布による試験工具を作成した。それらの工具を用いてTi-6Al-4Vの旋削を行った。結果として、テキスチャ+Cu蒸着およびグラフェン合成と塗布した3種類の試験工具が他の工具に比べ初期摩耗が約1/2、摩耗進行もやや遅くなるという結果が得られた。単純にテキスチャーのみのものは、無処理の超硬工具とTiAlNコーティング工具よりも若干摩耗進行が緩いが、初期摩耗はそれらとほぼ同じであった。ただし、まだ切削時間が短い時点での評価であるので、切削を継続していく。 本実験実施して課題として浮かび上がったことは、グラフェンのCVD合成時に気相合成であるので、原料ガスをある流速で流す必要がある。これまでグラフェンの合成を平面上にしか行ってきていないので、表面に凹凸にある面に対してガスの流れを考慮した試料のセッティングが必要であることがわかった。グラフェンの合成状況と工具表面の状況は、ラマン分光分析とTEM観察により確認を行った。 さらに今回の実験で想定していなかった知見が得られた。それは前述の初期摩耗の低減である。その理由付けは、継続して調査して明確にしていくが、初期摩耗の低減手法として安定した効果が得られるのであれば、工具寿命を延ばす手法として有望視される。 ・ホットブロー加工用の装置の準備を整えた。 ・高熱伝導を利用するために単結晶SiCを用いた工具ホルダーを試作した。これらを用いた実験は未着手であるので、継続して実験を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
テキスチャを有した工具表面へのグラフェン合成に関して想定していなかった課題が発生した。特にエンドミルのような溝を有する場合は問題となるため、それへの対応策は考案しており、方策を修正したうえで進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
以下の事項を次年度進めていく。 ・ホットブロー加工を実施し、凝着層の結晶微細化の緩和、それによる工具-凝着層接触界面での接合状況の観察、工具損傷等のデータを加熱温度を変更して収集する。 ・グラフェン合成のテキスチャー形状の変更も含めて、合成時の原料ガスの対象物表面への供給状態を考慮した形を検討し、断続切削用工具の形状にも合成可能な方策を検討する。 ・単結晶SiCを用いた工具ホルダーの放熱効果について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度使用額残額は、主要な経費使用を行った結果の残額範囲と考える。次年度使用額を次年度予定額に合わせて使用する。
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