研究課題/領域番号 |
17K06082
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
清水 浩貴 九州工業大学, 大学院工学研究院, 准教授 (50323043)
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研究分担者 |
田丸 雄摩 九州工業大学, 大学院工学研究院, 助教 (30284590)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 走査形状測定 / 運動誤差測定 / 多点法 / MEMS / 平面度測定 / 真直度測定 / オンマシン測定 |
研究実績の概要 |
本研究は機械加工された精密平面のうねりを加工機上で測定するためのMEMS計測デバイスを開発し,さらにそれを用いた計測手法の開発を目指すものである.加工機のステージを用いた走査形状測定ではテーブルの運動誤差が計測誤差の原因となるため,複数のセンサを同一のテーブル上に搭載して走査し,その出力から演算により運動誤差を除去する多点法が用いられる.この手法による狭ピッチかつ高精度な多点法形状計測を実現するため,5ないし10のカンチレバー式変位計をシリコンウエハ上に一体構造として作りこんだMEMSデバイスを開発している. 今年度は従来の製作プロセスで問題となっていた,探針製作時や外形打ち抜き時の配線及び素子損傷の問題に対処した.目標とするデバイス仕様では探針高さが250μmあり,その製作に長時間の結晶異方性エッチングを要する.この際,先に製作した配線やピエゾ抵抗体が損傷する問題に対し,配線に用いる金属を薬剤耐性の高い金/クロム配線に変更するとともに,ピエゾ抵抗体部にシリコン窒化膜を用いた保護マスクを積むプロセスで対応し,問題を解決した. SOIウエハを導入し,計測デバイスとして重要となる寸法精度の改善も試みた.中間層厚さ0.7μmのSOIウエハを用いたところエッチング停止深さをコントロールでき,探針高さのばらつきを低減できることを確認した. また,さらなる高感度化のための予備実験として,カンチレバー根本のひずみ検出部に圧電材料を用いるための基礎実験を行った.電極配置が圧電材料を上下から挟む必要があるため,新規のプロセス設計,基礎実験のためのマスク製作・チタン酸バリウムを採用しての基礎積層実験を行った. その他,10点法デバイスの製作を開始した他,並行して「正方配置4点法平面形状測定における対角角度測定の導入によるゼロ点誤差低減法」の数値シミュレーションによる検討を行い,その有効性を確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで製作してきたピエゾ抵抗体を用いたデバイスについては,利用設備の拡充をはかり,配線材料を変更した後の条件出しを完了した.ひずみ検出部の損傷への対処は,当初の予定のシリコン酸化膜での対応では改善はみられるものの一部に損傷が残ったが,その後シリコン窒化膜の導入により対処可能であることも確認でき,おおよそ順調である. 昨年度の納品遅れから今年度に計画を繰り延べたSOIウエハ導入による寸法精度改善については初期に設定した中間層厚さがエッチング停止に対して有効であることと,寸法精度の改善が確認された点は順調な進捗状況である.一方,最終的な打ち抜きの際に中間層が残留する問題も生じ,この点では対処が必要で引き続き対応を行う. 昨年度よりデバイスを用いた計測法のシミュレーションや構造設計に先行着手した10点法デバイスは早期に製作に着手できており,SOIウエハ導入の遅れをカバーしている.形状変更に伴うプロセスの条件出しや,製作時の固定方法等,課題を明らかにできたので今後対応を進める. 圧電材料であるチタン酸バリウムを用いたひずみ検出感度の改善については,利用設備の不具合からスパッタリングターゲットが過熱により損傷し,再製作となったことから基礎実験に多少の遅れが生じている. 多点法デバイスの利用法に関するシミュレーションは10点法,対角4点法ともに順調である. 一部に遅れはあるものの,先行している部分もあり総合的にはおおむね順調である.
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今後の研究の推進方策 |
5点法デバイスについては,SOIウエハを用いた際の最終の外形打ち抜の際に中間層がわずかに残留する問題が残っており,深堀エッチングの際の条件出しを進めることで,問題なくデバイスが製作できるプロセスの確立を目指す.さらに,SOIウエハ導入でエッチング深さと探針先端サイズが独立して制御できると予想されるため,その実証実験を行う. 10点法デバイスについても深堀エッチングの際の固定テープの張り付きの問題があり,さらに探針が細くこれまで製作してきたデバイスに比べて折れやすい問題に対応した製作法を検討する. チタン酸バリウムを用いた高感度デバイスについては,引き続き大阪大学ナノテクノロジー設備供用拠点の協力を仰ぎながら製作を進める.テスト用に検出部サイズを様々に変化させたマスクをすでに製作済みであるので,これを用いてひずみ検出実験を行い,それをもとに5点法デバイスへの導入を図る.こちらはマスクの製作とプロセスの大幅な変更が見込まれるので優先的に時間を充てる. デバイスの製作にあわせ,それらを利用して計測実験をおこなうための外部配線基板や固定冶具,実験装置の設計・製作を行う.並行して,30年度に計算機シミュレーションにより確認した,角度センサ導入による対角4点法平面形状測定法でのゼロ点誤差除去手法を実証するための実験装置の構築を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
半導体市況からSOIウエハを製造可能な設備が混雑しており,SOIウエハの小口発注が可能な業者からの回答に時間がかかったことと,発注可能な工場では発注後納品まで最短でも4か月程度かかり,2018年度予算で購入予定で既に発注済みのウエハが2019年度の納品となるため.
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