機能性材料である永久磁石の放電加工により,磁石形状と表面磁束密度を「同時に」あるいは「個別に」制御できる可能性を見出し,その機能制御の具体策の知見を得るために磁石内部温度と放電条件等の関係,磁石形状変化との関係を追求してきた. 最終年度は,2年間の研究成果をもとに熱伝導解析を元にした磁石内部温度の推定と実加工における磁石内部温度の計測,および加工後の磁石表面磁束密度の計測を目指した. ただし,前年の研究結果である初期磁束密度を変化させた磁石に対する各種条件での放電加工結果から,磁力が強い状態では,加工中に発生する加工粉が磁石表面に再付着し,その加工粉への放電が発生することで磁石表面への入熱状態が変化することが明らかとなった.そのため,通常の鉄鋼材料への同一条件で検討された熱伝導解析結果から予測される磁石内部温度とは明らかに異なる温度状態が計測された.その一方,磁力を完全に除去した脱磁磁石に対する放電加工では,鉄鋼材料と同様に磁石内部温度は,解析結果と似たような推移を示すことがわかった. そこで,磁力のある永久磁石への放電加工中の磁石内部温度の実測結果に近づけるような解析アルゴリズムをいくつか検討し,放電加工中の磁石内部温度の推定を目指した.ただし,放電加工中にも加工表面の表面磁束密度は時々刻々変化していることが推定されており,その結果を含めた連成解析にまでは至ることができていない.あくまでも温度状態を実測値に近づけた推定は可能となったが,上記影響および磁石形状が変化し続ける影響もさらに蓮成させることが必要となり,より複雑な解析が必要であることが明らかとなった.
|