研究課題/領域番号 |
17K06093
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
中尾 陽一 神奈川大学, 工学部, 教授 (00260993)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 工作機械 / 温度制御 / 熱的安定性 / スピンドル / 伝熱工学 |
研究実績の概要 |
本研究は、微細形状を有する金型を含む各種精密部品の加工用途に適した、これまでのスピンドル性能を大きく上回る高速高剛性スピンドルの開発を目的にして実施している。特に、高い加工精度を達成するために、高い熱的安定性を有するスピンドル開発を目指している.具体的には、10 万min-1の超高速回転時においても、スピンドルの初期温度が保てるようにスピンドルの基本設計を目指している。さらに、チラーの温度制御性能を超える高精度高応答水温制御系に加え、スピンドル温度のフィードバック制御機能を具備させることによって、従来にない高性能スピンドルシステムの実現を図ろうとするものである。今年度の主な研究実績の概要は次の通りである。 1. スピンドルのフィードバック温度制御 スピンドル各部の温度は、スピンドル内部の熱源による影響に加えて、設置環境の温度変化、スピンドルに供給される水温変化、設置環境における他の要素との熱放射により、複雑に変化する。そこで、今年度は、開発したフィードバック温度制御システムをスピンドルの温度制御に適用し、実験によりその効果検証を行なった。その結果、スピンドル回転数、環境温度変化があっても、開発システムにより、スピンドル温度変動が抑制可能なことを実証した。 2. スピンドルの軸心冷却構造等、内部冷却構造がスピンドル温度に及ぼす影響 本研究では,特殊構造の冷却構造を回転するロータに具備させている。さらに、スピンドル本体には、2種類の冷却流路が構成されている。そこで、これら3種類の冷却構造がスピンドル各部の温度変化、さらに熱変形に及ぼす影響をコンピュータシミュレーションにより検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、スピンドルの熱的評価に関する3次元モデルを対象にして、詳細な解析を行なった。そのために、3次元モデルを構築し、シミュレーションを試みたが、複雑構造のモデリングに時間を要したため、研究進行が遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
1.スピンドルの高速回転時の熱的特性の評価 本研究で考案,開発した特殊構造を有する軸心冷却機能、その他の冷却構造について,スピンドルの高速回転時にその冷却性能の効果検証を行う。 2.軸端変位の予測 今年度の研究で効果検証したスピンドル温度のフィードバック制御の適用により、加工精度に直接的に影響する軸端熱変位への抑制効果を実験的に検証する予定である。さらに、軸端熱変形をスピンドル温度からの推定を可能にするシステム開発を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験装置の調整に予想以上に手間取った。また、3次元モデルによる解析に時間を要したため、その後に実施することにしていた実験着手ができなかった。しかしながら、今後は、新たな実験を開始予定のために、科研費により支出予定である。 また、当初予定していた海外出張、国内出張による研究発表がいずれも、コロナ禍の影響により実現しなかったことも要因になっている。
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