研究課題/領域番号 |
17K06101
|
研究機関 | 富山高等専門学校 |
研究代表者 |
浅地 豊久 富山高等専門学校, 機械システム工学科, 教授 (70574565)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 電子サイクロトロン共鳴イオン源 / ウィーンフィルタ |
研究実績の概要 |
初年度である平成29年度は,多価イオンビーム支援プラズマ加工装置の開発を中心に進めた. イオン生成部はデスクトップサイズの小型で安価なイオン源を開発するため,磁場形成には永久磁石を用い,マイクロ波は市販の1.2GHz帯マイクロ波無線機(最大出力10W)を使用した.初期のイオンビーム生成実験では引出電圧3kVにおいてアルゴンビームで約110μAを得ることができた.このビーム量は一般的なECR多価イオン源と比較してもそれほど劣っておらず,安価なイオン源としては十分と考えられる.次に,多価イオンの生成状況を調べるためにウィーンフィルタを製作した.ウィーンフィルタは,小型イオン源を実現するためには必須の質量分離器である.フィルタの前後に設置するビームガイドの直径を変更し,最終的にはφ1mmを使用したところ,アルゴン1価は分離できたが多価イオンと考えられるピークは検出できなかった.この対策として,多価イオンを生成するために必要な低圧力化を図るために磁場強化を行った.これによってプラズマ生成圧力の下限が 6×10-3 Paから 5×10-4 Paとなった.このあとウィーンフィルタで質量分離を行ったところ,アルゴン2価と思われるピークが見られるようになり,多価イオンの生成および分離に成功したと考えられる. 一方,プラズマ加工部については,異方性加工に必要な0.1Pa前後でのプラズマ生成を設計仕様とし,マルチカスプ磁場を配置したチャンバーを新たに製作した.このプラズマチャンバーについても1.2GHz帯のマイクロ波を用いてプラズマ生成実験を行い,放電開始圧力は高いもののプラズマ維持については設計仕様の通りであることを確認した.このチャンバーには加工基板を設置し,バイアス電圧(高周波電力)を印加するためのステージが設けてある.さらには温度制御するための水冷も可能となっている.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
多価イオンビーム支援プラズマ加工装置の開発はほぼ予定通り進んだ.しかしながら,チタン基板の加工レート温度依存性の検証については,装置のトラブルによってほとんど進めることができなかった.これについては,本研究の予備実験の位置づけであるのでそれには時間をかけず,平成30年度についてはメインテーマである多価イオンビーム支援プラズマ加工装置を用いての加工レートなどの実験を中心に行う.
|
今後の研究の推進方策 |
平成30年度については計画通り多価イオンビーム支援プラズマ加工装置を用いて,イオンビーム加工でのエネルギー依存性やイオン種および価数の影響を検証する.課題として考えられることは,多価イオンを生成するためのイオン源はできるだけ低い圧力でプラズマを生成したいのに対して,加工部は実用的な加工レートを稼ぎ,尚且つ異方性加工を実現するためには0.1Pa付近が好ましいという圧力差を1つの装置で実現可能かどうかである.30年度は真空装置としての性能の評価から始め,プラズマ/イオンビーム生成および加工実験を進めていく.
|
次年度使用額が生じた理由 |
予備実験として予定していたチタン基板の加工レート温度依存性の検証が装置のトラブルで実施できなかったため,チタン基板等の消耗品購入費が次年度に繰り越しとなった.次年度には多価イオンビーム支援プラズマ加工装置での加工レートの測定を予定しているので,そのための基板購入やガスの購入に使用する計画である.
|