研究課題/領域番号 |
17K06102
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研究機関 | 奈良工業高等専門学校 |
研究代表者 |
和田 任弘 奈良工業高等専門学校, 機械工学科, 特任教授 (10141912)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | PVDコーティング / (Al, Cr, W, Si)系被膜 / 被膜特性 / 工具摩耗 / 焼入れ鋼 / 焼入れ焼結鋼 |
研究実績の概要 |
本研究では、(Al、Cr)ターゲットに、タングステン(W)、およびシリコン(Si)を加えた合金をターゲットに使用した新しいタイプの(Al、Cr、W、Si)系被膜を開発し、この被膜が耐凝着性および耐アブレシブ性に優れた切削工具用被膜であることを明らかにしてきた。当該年度は、本研究の完成年度であるため、2種類の(Al、Cr、W)合金ターゲット、および2種類の(Al、Cr、W、Si)合金ターゲットを使用し、超硬合金ISO K10種母材に、PVDコーティング法によって数種類の複層被膜を形成させた。複層被膜コーテッド超硬合金工具で、各種の被削材を乾式旋削し、工具摩耗を調べ、単層被膜コーテッド超硬合金工具との比較を行った。 (1)焼結焼入れ鋼を複層化被膜コーテッド超硬合金工具で、切削速度1.67m/s、送り0.2mm/rev、切込み0.1mmで乾式旋削した場合、(Al60、Cr25、W15)N被膜と(Al53、Cr23、W14、Si10)N被膜を複層化したコーテッド超硬合金工具の摩耗進行が最も遅かった。 (2)焼入れ鋼を複層化被膜コーテッド超硬合金工具で、切削速度1.00m/s、送り0.1mm/rev、切込み0.1mmで乾式旋削した場合、被膜を複層化することにより工具寿命が延長された。さらに、複層化被膜の中では、(Al53、Cr23、W14、Si10)(C、N)被膜と(Al58、Cr25、W7、Si10)(C、N)被膜を複層化したコーテッド超硬合金工具の摩耗進行が最も遅かった。 最後に、補助事業期間(平成29年度~ 令和元年度(変更前))を通じて、新しい切削工具用被膜を開発するための有用な情報を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者は、ターゲットに(Al、Cr、W、Si)合金を用い、反応ガスにN2、CH4 ガスを用いて成形される3 種類の(Al、Cr、W、Si)系被膜、すなわち(Al、Cr、W、Si)N 膜、(Al、Cr、W、Si)(C、N)膜、(Al、Cr、W、Si)C 膜の被膜特性を調べた。さらに、バイアス電圧や被膜の複層化が被膜特性に及ぼす影響も調べた。次に、これらの被膜を持つコーテッド超硬合金工具で、各種の鋼材(焼入れ鋼、焼入れ焼結鋼、低合金鋼)の旋削を行い、工具摩耗を調べた。科学研究費の交付期間内(平成29年度~ 令和元年度(変更前))で、(Al、Cr)ターゲットに、タングステン(W)、およびシリコン(Si)を加えた合金をターゲットに使用した新しいタイプの(Al、Cr、W、Si)系被膜を開発し、この被膜が耐凝着性および耐アブレシブ性に優れた切削工具用被膜であることを明らかにできたため。
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今後の研究の推進方策 |
2020年3月26日から3月29日にかけてスペイン・マドリッドで開催されるThe 10th International Conference on Key Engineering Materialsで、科学研究費助成事業で得られた研究成果を発表すべく手続きを進めていた。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大状況を鑑み、また社会情勢を考慮し、予定している国際会議の参加を見送った。このため、補助事業期間を、平成29年度~ 令和元年度(変更前)から平成29年度~ 令和2年度(変更後)に変更した。したがって、令和2年度では、過去3年間の研究成果を補強するとともに、国際会議などを通じて、前年度までに得られた研究成果を公開する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、2020年3月26日から3月29日にかけてスペイン・マドリッドで開催されるThe 10th International Conference on Key Engineering Materialsで、科学研究費助成事業で得られた研究成果を発表すべく手続きを進めていた。しかし、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大状況を鑑み、また社会情勢を考慮し、予定している国際会議の参加を見送ったため。使用計画は、過去3年間の研究成果を補強するとともに、国際会議などを通じて、前年度までに得られた研究成果を公開する。
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