2点加熱による高速ドライ割断加工の可能性について研究を行った.まず,FEMによる3D熱応力解析を行い,その際の物性値は,ヤング率,熱伝導率,線膨張係数,比熱については温度依存性を考慮した.本年度は,前方1点目の加熱点を円から楕円に変更した条件で検証を行った.この理由としては,前年度に加熱点形状を円で行った際,レーザ加熱点におけるエネルギー密度が高すぎたため,前方一点目の加熱点で,すでに表面部に微細なき裂が発生し,後方で行うはずのき裂誘導を行うためのレーザ入熱を阻害したためである.そのため,前方の加熱点を楕円へと変更し,エネルギー密度を下げつつ,ガラスへの総エネルギーは極力減らさず,2点目でき裂誘導するためのエネルギーを確保するために行った.そのため,速度,2点間距離,レーザ出力,一点目の楕円のアスペクト比を変えて解析を行い,2点間において,応力拡大係数が破壊靭性値を超える領域が広くなる条件を求めた. この条件を基に,1点目の加熱点を楕円へと変換し,速度,レーザ出力,2点間距離を変えて実験を行い,成功領域を探索した.その結果,昨年度より30mm/sの高速化に成功した.しかし,加工開始地点付近に小さな反りがみられた.どの条件においても,初期き裂先端部付近で見られたため,これは1点目の圧縮応力場が残っている状態で2点目の引張応力場が来たためであると考察した.そのため,今後は2点間の距離を,今よりもさらに長く取ったうえで割断成立条件を解析上から探索する必要がある.
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