本研究は,SiC基板などのワイドギャップ半導体用基板の電界援用による高効率ワイヤー切断加工技術「電界スライシング技術」の創出を目指し,最適な電界印加条件と切断条件を探求するものである.平成29年度は,「電界スライシング実験装置」を試作し,ワイヤーへの印加電圧,周波数,印加方向などの電界条件に加えて,ワイヤー走行速度などの切断条件やワイヤー種を変化させた時の砥粒の流れ,分布などの運動特性を顕微鏡下の観察を通して,メカニズムを明らかに,平成30年度以降は,自動送り機構を用いて実際の切断実験を実施する.さらに,前年度得られた電界下におけるワイヤー周りの砥粒配置条件から高効率かつ高品位な切断面が得られる要素のメカニズムを解明し,最適な切断条件,及び電界条件を明らかにするものである. 本年度は,平成30年度に引き続き,平成29年度に試作した【電界スライシング実験装置】を用い、原理切断実験を行い、滴下するスラリーの遊離砥粒径,溶媒粘度,濃度などと、電界印加条件(電界強度、波形、周波数)などの影響についてSi材を被加工物として調べた.その結果、切断効率は溶媒の粘度によらず効率向上を果たすが,100cStなどの高粘度よりも10cSt程度の低粘度溶媒の方が効果が高いことがわかった.また,GC砥粒を用いた濃度依存性において,電界を印加するとわずか1wt%のスラリーで20wt%と同等の切断効率が得られることがわかった。また,平成30年度に出願した特許を国際出願した.
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