マイクロニードルアレイ用の金型製作では、円錐状の微細針を数十~数百個も切削加工しなければならない。それぞれの円錐状金型で加工によるバラツキを無くすには、マイクロエンドミルの切れ刃に生じる摩耗を低減させる必要がある。これまで切れ刃形状や主軸回転数が切れ刃摩耗に及ぼす影響について明らかにしたが、当該年度は送り速度について検討した。使用した工具は、切れ刃のテーパ角が片側30°、最大直径1mm、最小直径0.08mmの2枚刃超硬合金製エンドミルであり、硬さ40HRCのプリハードン鋼に対して深さ200μmの円錐形状止まり穴を加工した。主軸回転数は毎分10000回転に設定し、送り速度は1~5mm/minで変化させて、切れ刃が欠損するまでに加工できた穴数について評価した。その結果、送り速度1mm/minで100穴以上あけることができたが、送り速度が増加するにつれて加工できる穴数は減少した。送り速度が3mm/min以上になると、穴数は送り速度1mm/min のときの1/10以下となり、工具寿命が極端に短くなることがわかった。加工された穴の形状から加工中の摩耗を推察した結果、送り速度が1mm/minの場合、穴の形状が徐々に小さくなっていたため、切れ刃摩耗が徐々に進展して欠損することがわかった。一方、送り速度3mm/min以上で加工したときの穴形状には変化がほとんどなく、突発的に折損が発生していたため、切れ刃の摩耗よりも剛性の低さが欠損に影響することが明らかになった。使用したNCフライス盤では送り速度を1mm/minより低く設定できないが、送り速度をさらに低くすることにより、高い精度での金型加工が期待される。
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